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【社会】

田んぼ発電 稲の有機物「餌」に微生物が電子放出

2011年8月13日 13時54分

水田で微生物を使った発電技術の研究を進めている東京薬科大の渡辺教授。わずかな電力だがプロペラが回る=千葉県野田市で(木口慎子撮影)

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 太陽光など自然エネルギーへの注目が高まる中、微生物の働きで電気を生み出そうという研究が進められている。ゆくゆくは、発電能力が高い微生物を使った燃料電池の開発が目標だが、田んぼなど身近な自然に生きる微生物でも発電できるという。 (加藤益丈)

 「おー、回った」

 千葉県野田市にある市民農園の水田。モーターの力で勢いよく回る小さなプロペラを見て、東京薬科大の渡辺一哉教授は満足そうな表情を浮かべた。

 微生物発電研究の第一人者で、五月まで特任准教授として在籍していた東大とともに、水田の一角を借りて研究を進めている。

 渡辺教授によると、ある種の微生物は、有機物を分解してエネルギーを取り出す際に、電子を体外に放出する性質を持っている。この電子を電極に受け渡すことで、電気を生み出せるという。

 有機物の分解で目をつけたのが水田だ。稲は光合成で有機物をつくり出すが、その一部は根から流出される。これを微生物に「餌」として与え続けることで、発電を促そうというわけだ。

 現在は稲四十二株に電極を設置し、データを収集している。「発電は稲と微生物の共同作業。稲が頑張ると微生物も頑張るんです」と渡辺教授。日差しが強い夏の時期は光合成も盛んで、発電量も増えるともくろむ。

 発電による稲の成長への悪影響は確認されていないが、難点は、稲一株あたり生み出される発電量が数ミリワット程度にとどまること。家庭用の白熱電球をともすには、およそ稲一万株(約五アールの田んぼに相当)が必要になる計算だ。

 渡辺教授は、効率よく微生物の電子を集める電極の素材や設置方法を模索するとともに、発電能力がある新たな微生物を探し続けている。

 これまでの研究で、米国の湖で見つかった「シュワネラ菌」などは高い発電能力が確認されている。渡辺教授らが目指すのは、こうした菌を使った「微生物燃料電池」の実用化だ。

 特に期待されるのが下水処理場での活用。汚水に含まれる有機物を餌に発電すれば、処理に使う電力消費量を減らせる上、発電の過程で有機物が分解され、処理の助けにもなるからだ。

 さらに食品工場などの廃棄物や、家畜の排せつ物などからも微生物の力で発電できる、と渡辺教授。「地域にある資源を生かしてエネルギーを生産する二十一世紀型の発電技術だ」と強調している。

(東京新聞)

 

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