米国統治下の1955年〜56年、沖縄での原子力発電所の建設案を米国民政府高官が提言し、下院議員の米議会への勧告に盛り込まれていたことが、朝日新聞が入手した米公文書からわかった。「原子力の平和利用」の象徴だった原発を沖縄に造り、米国の統治の正当性を内外にPRする効果を狙ったとみられるが、実現しなかった。
朝日新聞が入手したのは、「沖縄の原子力発電所の建設」と題したモーア・米国民政府副長官が作った55年9月7日付の提言書で、上司のレムニッツァー民政長官にあてたもの。モーア氏は現地沖縄の実質的な統治総責任者で、レムニッツァー氏は日本本土や沖縄などを管轄する米極東軍の最高責任者を兼ね、東京駐在だった。
提言書でモーア氏は、沖縄に原発を造る意義に触れて、極東で初めての「原子力の平和利用」の実現となり、「政治的かつ精神的に好ましい確かな反応」や「精神的に巨大な利益」を生むだろうと主張。また、中東からの輸送費が原油価格よりも高い沖縄のような土地では「原発が最も競争力を持つ」と強調した。