東京電力福島第一原子力発電所の事故が農作物などに与えた影響について、東京大学などが調査したところ、小麦では放射性セシウムが根から吸収される量が少ないとみられ、研究グループは、食用となる穂への影響が小さいのではないかとみています。
東京大学は、福島県と共同で原発の事故直後から放射性物質が農作物などに与える影響を調べています。このうち小麦の葉や穂などの放射性セシウムの濃度を計測したところ、事故の前から生えていた葉からは1キログラム当たりおよそ28万ベクレルの高い濃度が検出されました。これに対して事故後に成長した穂から検出されたのはおよそ300ベクレルで、葉に比べて1000分の1程度でした。このため研究グループは、小麦では放射性セシウムが葉から移動したり、根から吸収されたりする量は少なく、食用となる穂への影響は小さいのではないかとみています。また、福島県内の水田から深さ5センチごとに土を採取して放射性セシウムの濃度を計測したところ、96パーセントが表面から5センチまでの深さに分布していました。研究グループは、土の表面を取り去るなどの対策を取れば放射性セシウムの影響を減らせるとみて研究を進めることにしています。東京大学の塩沢昌教授は「水田など日本に特徴的な農地や農作業への放射性物質の影響を明らかにすることで福島県の農業の復興を支援したい」と話しています。