ホンダの二足歩行ロボット「アシモ」が、東京電力福島第一原発の事故現場に投入される可能性が出てきた。ホンダは、人間に近い作業ができるアシモの技術を応用し、専用ロボットを開発。人が近づけない放射線量の高い場所で作業することを検討している。
活用が検討されている機能は、人のように滑らかに動く腕の技術。モーターで動く肩やひじ、手首の微妙な力加減を、コンピューターで調整できる。
ホンダは、アシモを原型として、腕の技術を生かした事故処理専用ロボットの製作をめざしている。現場は足場が悪く、転倒の危険もあるため、足回りは二足歩行ではなく、タイヤや、戦車のようなクローラー(無限軌道)を使うとみられる。
実際の作業では、原子炉建屋の内部までロボットを運んだうえで、離れた場所から作業者が操作する。ロボットに取りつけたカメラの画像を見ながら、微妙な力加減でボルトを回して配管を取り付けるなど、ふつうのロボットでは難しい作業もできる可能性がある。
二足歩行のアシモを見回りに使うことも検討している。原子炉の状況が安定した後も、構内は放射線量の高い状態が続くとみられる。被曝(ひばく)の危険にさらされる作業員に代わり、アシモが構内を巡回。計器などを定期的に点検し、データを集めることなどが想定されている。
アシモは、ホンダが2000年に発表した二足歩行ロボット。今年度中に、07年以来4年ぶりとなる、大幅な改良を加えた新型を発表する予定だ。改良型は、目的地まで高精度にたどり着ける制御機能を付けるほか、手の動きをより滑らかにする。
その改良型の開発中に福島第一原発の事故が発生。主にイベント用のコミュニケーションロボットとしての活用にとどまっていたアシモの技術を、事故処理にも活用する案が社内外で浮上。改良型に使われる技術を使い、急きょ、事故処理専用ロボットの開発に取りかかった。
ホンダは、先端技術を研究する本田技術研究所(埼玉県和光市)で、ロボットを開発中。経済産業省が所管する産業技術総合研究所とも連携し、早期の実用化をめざす。事故現場では主に欧米製のロボットが使われているが、1〜2年後には日本の誇るロボット「アシモ」が活躍しているかもしれない。(橋本幸雄)