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孤立する極右日本 - 北朝鮮、中国、韓国と冷戦状態へ
もうすぐ8月15日。一昨日(8/11)は、日本と東アジアの周辺諸国との関係を考える上で、重要と思われるニュースが二つあった。二つともネットで瞥見したもので、テレビ報道でも扱われなかったし、昨日(8/12)の朝日の紙面記事にもなっていない。柏の2歳児の餓死事件もそうだが、重要な事件をマスコミが無視して取り上げず、人々の注意や関心が向けられない。最近のマスコミは、天気情報ばかりを話題にし、ニュース番組の中身を埋めている。まるで、キー局全てが熊谷に支局と駐在員を置いているかの如くだ。熊谷市と館林市は、当の温度計が撮られるバックに市松格子のパネルを置き、市の名産品を広告宣伝すべきである。コピーとイラストの製作を代理店に発注すべきで、天恵である機会を見逃すべきではない。テレビの担当者が温度計の現場に来たときは、フラッペやアイスノンで接待してもてなし、売り出し中の特産品を持ち帰らせるべきである。私が市長か観光課長ならそうする。天気の報道が主役になることで、大事な問題が脇に押し退けられている。そういう傾向を否めない。一つは、枝野幸男の国会答弁で、「尖閣が侵略された場合、あらゆる犠牲を払ってでも自衛権を行使して排除する」と発言した問題である。もう一つは、靖国神社で抗議行動をしていた台湾の国会議員を、警視庁公安部が威力業務妨害の容疑で書類送検した問題である。


二つとも重大な外交上の事件であり、過去にない衝撃的なニュースである。中国や台湾で、韓国や香港で、この二つの問題がどう報道されているかは分からないが、日本のマスコミが問題にせず、国民の間で全く議論されず黙殺されていることが、私には異様なことだと思われてならない。過去に、外国の議員が日本で逮捕されたり送検されたりしたケースがあっただろうか。しかも、この場合は公安部による捜査であり、刑事事件の形式をとっているが、明らかに政治的思想的な思惑での摘発である。日本政府のトップが了解と指示を出し、日本の国家意思を台湾に示している。送検された高金素梅が、再び抗議行動のために入国しようとした場合は、空港で逮捕されることになるだろう。台湾政府は、この件で日本政府から事前に説明を受けたのだろうか。もし打診を受けて、了承を出したとすれば、とんでもない国辱の事態であり、市民から反発を受けるだろう。了承をしていないのであれば、その旨を市民に明らかにすべきで、この事件について意思表示すべきである。高金素梅の主張の是非は別にして、台湾の国会議員の身分の者に対して、こうした刑事事件の口実で言論の自由への封殺が仕掛けられたことは、台湾の主権侵害に繋がる由々しき問題ではないか。まして、事は靖国という歴史認識に関わり、さらに、台湾は震災で多大な義援金を送っている。

以前、右翼の小林よしのりの台湾入国が禁止され、「台湾論」が店頭から回収されて焼却される事件があった。この事実を思い出す必要がある。多くの日本人は、台湾は無条件な親日であり、同時に無条件な反中反共だと思い込んでいて、その固定観念を都合よくズラし、台湾の「親日」の中身を現在の右翼化した日本まで含むものだと勘違いしている。靖国に対する台湾の人々の感情は複雑で、世代間や民族間で微妙な温度差があり、一義的に断定できないのは確かだが、高金素梅が訴えている台湾人の分祀要求は、台湾人の主張として至極当然で、議論になれば台湾の中で支持する人々は多いだろう。世論の多数を制しておかしくない。むしろ、韓国とか在日の人々の中から、高金素梅的な要求が強く出て、日本政府に大きな圧力がかかっていない状況が不思議に思えるほどだ。私自身は、自民党ではない民主党政権(元市民運動家の菅直人の政権)が、こうした右翼的な暴挙に平然と出る事態に唖然とするし、この影響で台湾の人々の日本への不信や反感を増幅したとしたなら、著しい国益の侵害だと嘆く。今回の日本政府の措置は、日本政府が靖国神社と一体であり、靖国神社の論理と乖離していない事実を東アジア諸国に示したもので、衝撃を受けた者は少なくないと思われる。「平和国家」としての日本の表象と観念を大きく損なうもので、アジアの人々に日本の「戦前回帰」を強く印象づけた。

韓国との関係も悪化の一途を辿っている。国内は、東日本大震災と原発関連のニュースで埋まり、日本と周辺諸国との関係について国民の意識が薄れているが、かなり深刻な事態になっている。3年前、左派の盧武鉉から右派の李明博に政権が移った途端、日本のマスコミは嫌韓報道を止め、北を共通の敵とする日韓連携の論調で埋め、政権も日米韓の軍事的三位一体を志向する流れに変わっていた。それが今年に入って急に怪しくなり、右派政権の李明博に対してさえ、竹島問題で露骨に敵対的な姿勢に変わっている。自民党の3議員の訪韓問題について、私は、政府はてっきり極右3議員の挑発行動を諫め、板挟みで困惑するコメントを出すかと思ったが、枝野幸男(外務省)が韓国を非難する発言に出て驚かされた。この問題で日本政府(官房長官)が発するコメントというのは、朝日が8/2の社説で出した「日本と韓国-領土問題で熱くなるな」の内容ぐらいが、従来ならちょうど案配のいい着地点だった。枝野幸男による韓国非難の弁は、それを一歩も二歩も右寄りに踏み出していて、読売や産経の主張に近いものになっている。東アジア共同体の構想を選挙で唱え、政権交代を果たしたところの、自民党よりはハト派であるべき民主党政権でである。この極端で急激な政府の右翼化については、もう取りつく島がないとしか言いようがない。そして、この恐ろしい事態について、誰も声を上げず、異常を異常と言わない。言えない。

日本のテレビ報道では、3議員の訪韓問題についての韓国側の反応を、空港での韓国右翼の狂騒の映像に収斂させ、韓国の新聞報道やソウル市民の声を拾って紹介することは全くなかった。ネットでは、ありがたいことに韓国主要紙の社説が日本語で読める。日本では、この問題はニュースのサブの扱いだったが、韓国の新聞は社説やコラムでずっと論じ続けていた。東亜日報の8/2の社説がまだ読めるが、私の立場はこの主張に近い。極右3議員の訪韓は意図的な挑発であり、日本の世論を右へ固める目的の行動であり、原発問題から国民の関心を逸らす思惑のものだ。ブログで何度も言い続けてきたが、日韓関係の外交憲法は1995年の村山談話である。そこには次のように書いている。「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません」。

この村山談話の宣言に照らして、極右3議員の行動への政府の対応はどうだろうか。準拠していると言えるだろうか。この村山談話の中にある「独善的なナショナリズム」とは何なのか。靖国を正当化する思想、東京裁判を否定する思想、韓国を挑発して日韓関係を悪化させる政治行動、これらが「独善的なナショナリズム」でなくて、一体何だと言うのだろうか。一昨日(8/11)の枝野幸男の尖閣への自衛隊出動の発言についても、内閣法制局はこの政府見解をオーソライズしているのだろうか。憲法や日中共同声明との整合性をとった上でのコミットメントだと認めているのだろうか。40年前、日中の国交正常化と平和友好条約締結に当たっては、尖閣の帰属問題が重大な障害案件になっていた。結局、尖閣の帰属を棚上げすることで、鄧小平の「将来の世代の知恵に委ねよう」の提案に日本が乗り、日中国交正常化は成ったのである。それが歴史の事実であり、日中関係の基本的前提だ。そして、憲法9条にはこうある。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。国際紛争は話し合いで解決すると言っている。もとより、尖閣は両国が主権を主張する係争地域であり、ニューヨーク・タイムズ紙も中国の主張の歴史的根拠を認める記事を書いている。尖閣の帰属は、日中両国が話し合いで平和的に解決すべき問題だ。その観点からすれば、枝野幸男の発言は行き過ぎた挑発である。

昨日(8/12)のニュースで、6か国協議の調整で北京を訪問した杉山晋輔が、胸に右翼の青バッジを光らせている映像があり、一瞬ギョッとさせられた。杉山晋輔は外務省の役人であり、政治家ではない。最近、海保庁長官とか、テレビに登場する官僚が右翼の青バッジを光らせている場面が多く、ひどく憂鬱な気分にさせられる。大越健介の胸にそれが装着されるのも、そう遠い先ではないだろう。日本は今から9年前、小泉訪朝のとき、拉致問題で北朝鮮との間で冷戦関係に入った。その後、小泉純一郎の靖国参拝と中国の反日デモのとき、2004年に中国との間で半冷戦状態に入った。ただし、当時の中国には4年後の五輪成功の国家目標があり、経済面で日本との関係を重視する方針があり、完全な冷戦状態には至らなかった。それが、2008年のチベット問題を経て2010年の尖閣問題に至り、遂に北朝鮮と同じ事態に至ったと言える。現在、政府間の信頼関係はなく、東シナ海ガス田など外交事案も滞り、日中関係は最悪の状態が続いている。自信をつけた中国、狭小になる日本、国民間も不信と敵対が深まり、なお悪化する兆しを漂わせている。いつ戦争が始まってもおかしくない。そして、2011年の韓国との断絶。日本のマスコミは大きく報じず、日本人は意識していないが、実際には両国関係は深刻な事態になっている。冷戦の緊張まであと一歩。さらに、台湾との問題にまで飛び火。四面楚歌の孤立とはこういう状態だ。村山談話というのは、わずか15年前の日本国の決意なのに、完全に死文化され、過去の歴史の文書になってしまっている。この立場にコミットする学者やマスコミの論者がいない。次にどうなるか。本当に気分が重い。

尖閣問題で台湾と中国が手を握る可能性について、外務官僚は真面目に考えたことがあるのだろうか。



by thessalonike5 | 2011-08-13 23:30 | その他 | Trackback | Comments(0)
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