東京、大阪両証券取引所の統合協議で、東証が大証株を株式公開買い付け(TOB)で取得して子会社化する案が有力となっていることが13日、分かった。取得する株式の比率や、TOB成立後の合併時の株式交換比率など細部を詰め、早ければ9月中に合意する方向で検討を進めている。公正取引委員会の審査が必要になるが、最短で来年4月に統合する可能性もある。
両者はこれまで、統合手法について意見の隔たりがあったが、統合で日本に国際競争力を持つ市場を作ることは必要との認識を確認し、歩み寄り始めた。
有力になっているのは、重要事項について決定権を握ることのできる「66%」や過半数の「50%超」などと上限を定め、東証が上場している大証株のTOBを実施、大証を子会社にする案。大証の上場は維持する。TOB成立後、大証を存続会社として親会社の東証を吸収合併する、いわゆる「逆さ合併」を実施して新会社を作る。
複雑な枠組みのため関係者の納得が得られるかどうかが難点とされてきたが、どちらかが一方的に相手にのみこまれる形にならず、両者ともに面目が保てる点が評価されて有力となった。TOBの上限を、株主総会で重要事項に対する拒否権を発動できる「33%」とする案も検討対象になっている。
非上場会社の東証は、株主である証券会社各社の要請もあって年度内の単独上場もなお検討しているが、「大証との統合メリットを説明すれば東証の株主にも認めてもらえる」との考えに傾きつつあり、9月に最終判断する見通し。
大証は、東証の株主に大証株を渡す株式交換方式による合併を主張していたが、非上場の東証の株価算定が難しいことなどから、検討対象から外れつつある。
上限付きTOBでは、東証は大証株を通常株価より高く買い取る必要があり、上限66%の場合、1000億円近い資金が必要になる可能性がある。このため、統合新会社の財務内容が悪化するとの懸念は残る。また、統合に際しての東証と大証の株式交換比率(合併比率)の算定も難しく、協議が難航する可能性もある。さらに、日本の現物株市場をほぼ独占する東証と、デリバティブ(金融派生商品)取引で世界有数の大証の統合を公取がどう判断するかも、合意後の焦点になる。【横山三加子、浜中慎哉】
毎日新聞 2011年8月13日 11時21分