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こんにちは:大衆演劇「豊富座」社長・葵好太郎さん /岐阜

 ◇観客との距離が魅力

 夕暮れ時の柳ケ瀬商店街の一角。花輪の並んだ廊下を抜け、階段を上ると、音楽と手拍子が聞こえてくる。28歳の07年に劇場「豊富座」を開いた。オーナーを務めながら自身も劇団「舞姫」の座長として舞台に立ち続ける。

 演劇俳優だった父好次郎さんの存在もあり、自然と大衆演劇の世界に。11歳で女形役者の葵陽之介さんの劇団に入門した。「小学校のころから『仕事』として舞台に立っていた」と振り返る。10代のころは周りの友達が遊ぶのを横目に一座で全国を行脚する日々。「周りの友達のように遊びたいって思う時期もありました」

 ターニングポイントは20代。「21歳で劇団を旗揚げして『この仕事で生きていこう』と決めた」。23歳の襲名公演は今も鮮明に覚えている。

 ほぼひと月ごとに劇場をかえ、年に12カ所を回る。1日の中休みを挟むだけの連日公演が続く。

 歌舞伎と同時期に起こったとされる大衆演劇だが、歌舞伎の手法とは対照的だ。音響や大道具、照明などの裏方は公演ごとに座員が持ち回りで務める。衣装もすべて座員の自前。演出家や舞台監督がいるわけでもない。台本は存在せず、役者の掛け合いがすべて。軽妙な語り口で客席をあおったかと思えば、妖艶な舞と曲で観客を引き込む。舞台の持つ表情はスポットライト同様に「色とりどり」だ。

 だからこそ、観客との距離も近い。演目終了後の劇場の出口では、座員が総出で観客を見送る。座員は17~25歳の13人。「劇団員も若者中心ですから、若い人にも見に来てもらって、楽しんでほしい。気軽に立ち寄れるのが大衆演劇の魅力だと思うので」

 来月1日には岐阜市徹明通1のビル8階に劇場が移転する。「設備が充実することで今以上に演劇の幅も広げられる」と意気込む。

 「かつてのにぎわいを」と言われて久しい柳ケ瀬で若い力が躍動している。単に「古きよき伝統芸能」と形容するのは、お門違いというものだ。【梶原遊】

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 ■人物略歴

 ◇あおい・こうたろう

 11歳で初舞台を踏み、役者人生20年。「毎日が本番」の大衆演劇の舞台に立ち続ける。今月22日には岐阜駅前、じゅうろくプラザで2座合同公演を予定している。31歳。

毎日新聞 2011年6月20日 地方版

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