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関西の商業施設、客はトイレでつかむ

2011年08月12日

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JR大阪駅のホームに面した場所に設けられた女性用の化粧台=大阪市北区のファッションビル「ルクア」

 商業施設のトイレが様変わりしてきている。女性トイレの行列解消のため男性用の5倍の個室を用意したり、男性トイレに「イクメン」用のベビーベッドや化粧台を置いたり。トイレの最前線を追った。

 5月にJR大阪駅北口にオープンしたファッションビル「ルクア」は、メーンターゲットを25〜34歳の女性に定める。このため、トイレも女性社員が知恵を出し合った。「トイレで並ぶことが最大のストレス。女性客をお待たせしないことを第一に考えた」と営業部の武内香奈枝さん(33)。地下1階、地上10階の全102室の個室のうち女性用を84室設置。さらに化粧直しで立ち止まる客での混雑を防ぐため、洗面台に鏡を置かず、別の場所に化粧台を計63人分用意した。

 居心地のよさにもこだわる。10階の女性トイレは高さ約3メートル、幅約12メートルの南向きの窓から差し込む光で、まぶしいほど明るい。4階のトイレにはアロマの香りを漂わせ、壁に観葉植物をはめ込んでリラックス効果を狙った。

 徹底的に女性の目線で作ったトイレに利用者も満足げだ。吹田市の主婦(31)は「明るくて、立ったままでも化粧台が使いやすく、とてもよかった」。

 一方、男性トイレにも新機能が続々生まれている。

 JR大阪駅南口の大丸梅田店は、子育てに積極的な男性に着目し、ほぼ全ての男性トイレに乳幼児用腰掛けやオムツ替えベッドを置いた。営業企画室販売促進部の荻野佳子さん(50)は「子どもの面倒をみるお父さんを店内でよく見かけるようになった。百貨店は時代の要請に合ったサービスを提供する必要がある」と話した。今春開業のJR大阪三越伊勢丹やあべのマーケットパークキューズモールも男性トイレに同様の機能を備えている。

 おしゃれやエチケットに敏感な若い男性に目をつけたのが、4月にオープンした京都マルイだ。系列店で初めて、男性トイレに化粧台を置いた。「髪形のセットに洗面台を長時間占有する人がいて困る」との利用客の声が複数あったからだ。さらに、用を足す音を消すために流水擬音が流れる「音姫」機能を男性トイレの全ての個室につけた。

 こうした各店の動きから「トイレは戦略的な場になっている」とみるのは大阪経済大学の藤岡里圭教授だ。小売業界は売り上げ低迷に加え、激しい競争が続く。藤岡教授は「各店は集客のための差別化に必死。トイレの充実はその延長といえる」と話している。

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