南米ペルーやエクアドル原産の花で、香水としてはじめて日本に入ってきた香りだと言われています。夏目漱石の「三四郎」にも香水として出てくる香りです。(ロジェ&ガレ社のヘリオトロープだったのではないかと言われています)
昔は南フランスで栽培されており、精油を得ていたのですが、収油率が低く、香りの揮発性が高くて分解しやすいということから、現代では精油は作られていないようです。市場に出回っているのは観賞用のものばかりなのですが、切ればあっという間に刺し芽で増えますし、花は室内で育てると年間を通じて開花するため結構採取するには良さそうな気もするんですけど。ローズやジャスミンと違って冬も咲いているわけだし。切っても切っても次から次へと成長するとても繁殖力の強い植物です。香りはパウダリーさと少し甘さを持ったフローラルで、アンバーとよく調和するために、香りの広がりや甘さを出すのに調合香料が良く利用されています。生花は、うーん、独特な香りではありますが、香水らしい香水の香りがするとも言えそうです。甘さ、青さ、フローラルっぽさにパウダリーさもありますから、クラシカルな香りを彷彿させます。
この花の主成分は花の名前からHeliotropinと名づけられていて、単独そのものでもとても生花の雰囲気を表しています。生花の持つ芳香成分の中でもかなりの割合をこのHeliotropinが占めているのではないかと思うくらいに香ります。香水の中で、ヘリオトロープのシングルフローラルを発売しているブランドはきわめて珍しく、MolinaidやLT Piver、ETRO等が発売しています。全く同じではありませんが、うまく特徴を再現している香りだと思います。ただ、メインとするにはちょっと物足りない香りだったりするのですが、冷たさを持った甘さとか、オポポナックス調のオリエンタルベースには欠かせない香りです。
(21/05/2009) |