福岡県立修猷館高校(福岡市早良区)は来年1月に2年生を対象に行う研修旅行で、東日本大震災の被災地・宮城県を訪れることを決めた。当初は他地域を予定していたが、「被災地で何かを学び取ってほしい」と変更。一部の保護者から安全確保の面で反対意見が出たため、被災地以外を含む3コースから自由に選ぶ形で実施する。東北の関係者からは「遠く九州から、あえて被災地訪問を決断してくださったことに感謝と敬意でいっぱい」と歓迎する声が上がっている。
修猷館の研修旅行は、いわゆる修学旅行だが、単なる名所旧跡見学や観光ではなく、企業訪問など体験型学習を主体にしているという。本年は中部地方でスキー研修の予定だった。
3月11日の大震災発生で、学校側は計画を見直し。「将来の日本を背負う若者は、現地を直接見るべきではないか」と考え、職員が6月上旬、宮城県を視察して受け入れ態勢を確認、訪問先を変更することにした。
ところが、保護者向けの説明会を開いたところ、「余震が心配だから子どもを参加させたくない」など反対意見が相次いだ。学校側は複数のコースから選択可能な形に変更。「旅行先は保護者、生徒に任せる」ことで対応した。
旅行は1月5-8日で宮城県蔵王町に宿泊。参加者は(1)スキー研修(2)スキー研修と被災地見学・活動(3)平泉など世界遺産訪問と被災地見学・活動-のいずれかを選ぶ。被災地では、被災者の体験談を聞いたり、児童を相手にボランティアに取り組んだりする方向で検討中だ。
菊池有・総括教頭は「生徒の心を育てるのも私たちの仕事。被災地を実際に見て、日本の将来を見据える人間になってほしい」と語る。まだ半数近くの生徒はコース未定だが、「できるだけ多くの生徒に被災地を見てほしい」との立場だ。
官民でつくる東北観光推進機構の長谷川博樹・国内事業部長は「現地は修学旅行のキャンセルが相次いでいる。修猷館が教育的見地に立って旅行先を宮城に変更されたと知り、涙が出そうなくらい心強く感じた。こういう時こそ教育の機会だという判断に、復興を目指す私たちは希望の光を見た思いだ」と話している。
=2011/08/13付 西日本新聞朝刊=