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アートのちから、いわてのタカラ

「森村泰昌「人間風景」−萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武とともに−」展の中止について


 今秋、岩手県立美術館で開催する予定でおりました標記展覧会を中止することとなりました。大変に残念なことですが、ご報告を申し上げます。

 この展覧会で、森村氏は、岩手ゆかりの3人の美術家、萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武の代表作からテーマを得て、それぞれの時代と社会に向きあいつつ、3人ともに悩み苦しんで深い美術表現を獲得したことを森村氏自身の表現を通じて再現しなおし、美術は時代とどうつながっているかということを、この岩手の現状の中において熟考してみようと試みていました。

 森村氏の意図と情熱は、そのまま岩手県立美術館の災害復興意識と合致し、また、美術館連絡協議会をはじめとする多くの関係の方々の共感も呼び、総意でもって展覧会準備を進める力になっておりました。

 作品準備の努力は続けられ、完成まであと一歩というところまで来ていましたが、森村氏がテーマに選んだ作品の一部が、そのご遺族から使用許可を得られないという事態になりました。該当の作品も、近代日本の社会から発した深刻な問題をテーマとして苦悩の底から制作されていて、それだけに森村氏の共感も深く、また、そのために、ご遺族には、森村氏の問題提起と該当作品がもつ固有の問題提起とは一体にできない別個のものと認識され、数度の話し合いを経るも認識の一致を見ることは叶いませんでした。結果として実現に踏み出すことが不可能となり、このたびのプロジェクトを中止することに至りました。

 森村泰昌氏と美術館連絡協議会、岩手県立美術館の合議により、標記展覧会の開催中止を決定いたしたことをここにご報告申しあげます。


平成23年8月12日



岩手県立美術館
読売新聞社
美術館連絡協議会