陸前高田でがれきとなった松(名勝「高田松原」の松)を、京都の「五山の送り火」(東大文字)で護摩木として燃やすことについて、結局実現しなかったという件、なんだか大きな反響を呼んでいるようです。
(報道をご覧になったことのない方は、この投稿の下部に朝日新聞の記事を転載していますので、ご参照下さい。)
→8月10日削除の上、下記の通りリンク明記。(参考記事)
京都で拒否された被災松、夜空焦がす 陸前高田で迎え火(朝日新聞デジタル)2011年8月8日23時47分
京都市への電話は8/9現在で900件を超え、その多くは批判的な内容とのこと。京都市は今回の件にほとんど関係ないにも関わらず、です。
この件について、私はある種の
「風評被害」の面もあると思っています。
(8月10日補足。この件に関しまして、私は市にも保存会にも、中止発表前に、問い合わせや苦情を申し述べた経緯はまったくございません。当初、開催の報道を見た際には放射性物質の付着を危惧しましたが、しかし、護摩木は松の表皮を履いで使用することや、量が少ないことから、その恐れは大変少ないという情報を頂き、問題ないと判断したたからです。その後はこの取り組みで被災地の方々の思いにより添えればいいなと思っておりました。しかし、中止発表後の、マスコミ報道の加熱ぶりにいささか疑問を感じまして、以下の文章を記した次第です。)
とりあえず、今回の護摩木の件につきまして、経緯を確認させて頂きたいと思います。
下記、私の友人が書いてくれたものですが、私もこの通りと認識しております。
◆国の名勝「高田松原」のマツが津波により数万本流される
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◆福井のNPOが「復興薪」として加工販売を始める
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◆自宅用の薪を探していた
大分の美術家(雛人形職人)藤原了児氏が、「高田の薪にメッセージを書き込み京都の送り火で燃やす」プロジェクトを発案。大文字保存会も了承。藤原氏が福井のNPOからマツを譲り受け、薪に加工し、陸前高田等の避難所等に置いてメッセージを募る。(ここで7/5朝日新聞が報道し、騒動が始まる。なお被災地の人が発案と8/9のNHKニュースウォッチ9では報じられたがこれは誤報。)
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◆
苦情や問い合わせが増えたため、藤原氏はブログに、マツの成分分析結果を掲載する。
http://www.fukkou.org/home/shi-yan-cheng-ji-cheng-ji-shu放射能検査は行っていない。1〜2枚目、塩素は木質ペレットの基準を満たしている。3枚目、
セシウムは検出されていないがストロンチウムは検出されている。放射性かどうか、自然由来か原発由来のものかどうかは不明。
↓
◆その後、藤原氏は放射能検査結果も掲載する。
http://huji.hinamaturi.lolipop.jp/?eid=1437067放射性ヨウ素、放射性セシウム不検出(検出限界10Bq/kg)
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◆8月4日夜、大文字保存会が、
不検出にもかかわらず世情を考慮して計画中止。松原公太郎理事長は頭を丸めて陸前高田に向かった。
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◆報道された8/6から8/8までに京都市へ「被災地の思いが無駄にする」「京都に裏切られた」などと中止を批判する電話・メールが約310件寄せられる。(
8/8 京都新聞)
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◆8月8日、京都市は陸前高田市等に連絡し、
薪の一部でもいいから京都市役所前で燃やさせてほしいと依頼するが、現地側から「気持ちはありがたいがこちらで迎え火として燃やす」と断られ、8月8日夜に陸前高田の迎え火として燃やされる。
↓
◆今後、大文字保存会では、
メッセージをすべて京都の護摩木に書き写し、8月16日の送り火で燃やす予定。
まず、京都とは関係ない人が発案しているところが始まりです。
そして、まったく京都の人間が知らないところで話が進められたので、「大丈夫?」と聞きたくなるのはおかしなことではありません。
こうした市民の問い合わせを受けて、主催者側では検査を行ったほうがよいと判断されたようです。
その結果、最初の成分分析で「ストロンチウム」が検出されました。
これは成分分析なので、どれだけの量が検出されたのかは分かりません。
もちろん、ストロンチウム「だけ」原発事故の影響で出るとは考えにくいものであります。(ストロンチウムは自然界にも存在しています)
実際、その後の放射性物質の検査では、ヨウ素とセシウムは不検出でした。
ただ、そのストロンチウムが成分から検出された時点で保存会などに問い合わせた市民は、「根拠のない不安・差別」で苦情を言ったのではないことは確かです。このように実際に検出された不安から、問い合わせが増えたのです。
もちろん、そんなことは知らずに問い合わせた市民も多かったとは思いますが、それにしても、8/8朝日新聞朝刊(本投稿の下部にアドレス記載)が「放射能汚染を不安視する根拠のない声に押されて」などと報じているのは、ちょっと問題があるのではないでしょうか。恣意的だったかどうかは分かりませんが、世論を誘導する結果となっています。
(そもそも、保存会に寄せられてた問い合わせって、どれぐらいだったのでしょうか)
さらに同じ8/8朝日新聞朝刊記事内においては、専門家の先生が「陸前高田市は福島第一原発から200キロ近く離れており、そもそも放射性物質が松に含まれる可能性は低い。冷静な対応を」とおっしゃっておられます。しかし、専門知識を持たない一般市民でも、300キロ離れた足柄茶の茶葉や、岩手県内の稲わらからセシウムが検出されている現状を見て、「距離の問題じゃないだろ〜」と理解しています。
しかもその専門家のご意見は「後出しじゃんけん」的に、放射性物質の検査結果が出てからおっしゃっておられるので、ある種「反則」でもあります。
また別の観点からの話になりますが、ご存じの通り、京都は京都外に多くの「京都ファン」がいますから、必ずしも京都市民だけが問い合わせたとは思えません。
同じ朝日新聞朝刊記事内、および8/9のNHKニュースウォッチ9では、大文字保存会に「京都のイメージが悪くなる」という苦情が寄せられたと理事長が答えておられますが、京都に住んでいる人間は普通そのような言い方はしません。
ちなみに私の周りの京都人はせいぜい、「何でお盆の『送り火』でよそさんの魂まで送るの〜?」というくらいでした。
(「大文字焼き」と言うと、京都の人は怒りますからご注意を(笑)。みなさんの家でもご先祖の霊を送るために、お盆にするアレです。普通は他の家の分まで燃やしたりはしないはず。五山の送り火も、イベント化していて、また、五山それぞれ発祥の意味はいろいろとありますが、要はお盆のその行事ですから。)
いずれにしても、京都外の人も同じように保存会に問い合わせた可能性はあるわけで、純粋に京都の住民がどれだけ今回の件で問い合わせていたのかは不明です。
以上のような状況にもかかわらず、報道各社は、「京都人の狭量と無知と差別意識が今回の事態を招いた。被災地を悲しませている。」という一方的な報道をくりかえしています。
明らかに、そうした報道が問題をエスカレートさせ、京都への悪感情を増幅させています。
ですから、最初に申し上げたように、私は今回の件はひとつの「風評被害」だと思っています。
実際に、京都新聞社には福島県内の男性から「仕事で京都の物産を勧めていたが、もうやめます」との電話もあったそうです。(
8/8京都新聞記事参考)
被災地と京都の絆を断ち切ったのは京都人ではなく、マスコミなのではないでしょうか。
京都市役所では、忙しい中、現在まで900件もの電話を受け付けざるを得なくなっています。
一番かわいそうなのは、大文字保存会の人たちです。今回の件で、方々から責められていないか、心配です。
護摩木の受け入れ中止については、全員一致でなかったからそう決定したそうです。
保存会の人達も、京都に住む一人の人間です。
否定的な意見が寄せられた以上、やめておこうとなるのは当然のことではありませんか。
もしも強行して今後、平穏に暮らしていけなくなったら…と考えるのは、だれしも当然のことかとおもいます。
京都の人は大変な「汚名」をかぶせられてしまいました。被災地の方々の思いを踏みにじった結果となったのは否めませんが、その申し開きができないままこの騒動が終わりになってしまうのは、京都に住む者にとっても釈然としないものがあります。
勝手な主張で、ますます被災地の人を傷つけているかも知れません。申し訳ありません。
ただ、被災地支援でがんばっている京都の人も多く知っているので、誤解は誤解で解いておきたい、と思った次第です。
ぜひ、報道各社には京都人への悪感情をあおりかねない報道を控えて頂き、より公正な報道をするように心がけていただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。
また余談ですが、私は今回の件で、京都市が震災がれきの受け入れについて前向きになるのではないかと危惧しております。
ご存じの通り、環境省は先に、10万ベクレルという、六ヶ所村で浅地中埋設レベルだった高濃度放射性焼却灰の、一般廃棄物処理場での埋立を認めてしまいました。また、より濃度が高い放射性物質が含まれるとされる飛灰を防ぐバグフィルターも、放射能物質対応でなくてもよいなどという判断です。(詳しくは
こちらをご覧ください)
私が京都市に問い合わせたところ、放射性物質を焼却する対応などできていないばかりか、現在の放射能数値すら測ってもおりません。何も想定していません。
この様な状態で無差別にがれきが持ち込まれると大変なことになると予想されます。
(その前に、放射性物質を含んだがれき自体をなぜ全国に拡散させるのか、大きな疑問を頂いておりますが。)
取り越し苦労かも知れません。またむしろ逆に、これをきっかけに、放射性物質を含んだがれき処理の問題に多くの人が目を向けるようになって下さるようになればうれしいです。
これは、被災地を差別しようとしているわけではなく、放射性廃棄物処理の方法として、国があまりにもずさんなやり方を推し進めようとしていることに対する、各地の市民の抵抗ですから。(なお京都での運動については
こちらをご覧下さい)
※追記(8月10日)
今朝の京都新聞記事より。
保存会は市長が、中止を報告した際には何も言わなかったのに、騒ぎが大きくなってから「残念」と言い出したことに不快感を示しています。なお京都市に事前に寄せられた問い合わせは40件程度だったようです。http://j.mp/qu4Joc
追記2
以下に掲載していた朝日新聞の記事全文が、著作権法に抵触するとのご指摘をいただきましたので、削除させて頂きました。
ご指導ありがとうございました。
追記3(8月12日)
陸前高田のがれきでつくった薪を五山全てで引き受けて燃やすという話が昨日出て、おいおいと思っていたら、その後、セシウムが検出されたとかで、燃やすのが中止になったとか。
陸前高田より届いた松からセシウムを検出 京都市「五山送り火」での使用を断念
(産経ニュース 2011.8.12 15:46)
京都の「五山送り火」(16日)の一つ「大文字」で岩手県陸前高田市の被災松を使う計画を中止後、大文字保存会が一転して受け入れを決めた問題で、京都市は12日、現地から届いた松から放射性セシウムが検出されたため、送り火での使用を断念すると発表した。
被災地も市民も振り回す京都市長と、それを取り巻く政治家の皆さん方。
判断が難しいことが多いのは分かりますが、マスコミなどの情報に流されず、最初からもっと市民の声に耳を傾けて政策的判断をしてほしいものです。
これも参考まで。
「がれきから放射性物質 岩手・陸前高田市」(産経ニュース2011.8.10 13:30)
岩手県は10日、東日本大震災で生じた陸前高田市のがれきから、1キログラム当たり1480ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県は埋め立てが可能とされる国の暫定基準値(1キログラム当たり8千ベクレル)を下回っており、通常通り焼却処理するとしている。
夕方に役所に電話しました。若い女性が対応してくださいました。
全部調べてくれたこと、中止にしたこと、本当に感謝する、と保存会の方に伝えてほしい、と言っておきました。
報道に関しては、どうも事実を言っただけが、各社によって色がついてしまったり
話があらぬ方向に行ってしまって・・・と困っているようでした。
今後は公平な報道がされるように、前もってチェックする等の防御が必要になってくると思う、と言うと、
そうかもしれない、その通りだと思う、と仰ってました。
数件掲示板を見回ったのですが、どうも送り火を「お祭り」と捉えている人がいるみたいです。
イベントや花火大会のように「お祭り」と捉えられていますよ、と言うと、絶句なさってました。
この京都圏の人間とその他地域の人たちとの「送り火」に対しての温度差も、
今回の誤解につながったと思うので、企画には参加してないくせに、
これを観光資源とつけこんで、あまりにイベント化させすぎた観光課は
これを機に反省して、送り火とは何かという根本をもっとアピールした方がいいのでは、と言いました。
今回のことはガレキの受け入れにも大きく影響を及ぼすと思うので、
中止にしてくれて本当によかった、とも伝えておきました。
観光課としては、ガレキ受け入れについてはどうお考えなのか、と聞きましたら
課としてまだ会議などは開いていないけど、何かあっては困る、という認識だけは皆持っている
ということでした。
観光スポットにも今後、線量計の設置が必要かもしれませんね、と言うと
はっとしたように「ほんとです、そうです、そうなってしまうかもしれないんですよね・・・」と。
原発事故以後、安心安全な日本は消え去ったという認識を新たにし
観光課にはやってくる観光客の安全、市民の安全をしっかり守ってほしいと言っておきました。
京都が汚染されたら世界遺産登録取り消しになってしまったりして、と冗談で言ったら
それは本当に困ると仰っていたので、まずはあなたが事態は深刻なんだということを理解し、
課のみなさんにどれだけ汚染が京都の観光産業にとって危険かということを
共通認識としてもっていてもらいたい、とお願いしておきました。
うまくまとめられずすみません、こんな感じです。