政府は8日、今月末から8日間の日程で予定していた今年度初となる硫黄島(東京都小笠原村)での戦没者の遺骨収集活動を延期する方針を固めた。降水量が少なく、同島に駐在して収集を支援する海上自衛隊が深刻な水不足に陥っているためで、貯水量の回復を待って再検討する。
8月31日から9月7日まで、日本遺族会など5団体の会員と、初めて募集したボランティアら計約50人が海自の施設に宿泊し、収集活動を行う予定だった。
防衛省によると、硫黄島は、滑走路に降った雨をためる約8万トンの池が唯一の水源。1~6月の降水量は例年の4割にとどまり、貯水量が1万3000トンを切る「約20年ぶりの渇水危機」(同省幹部)となった。その後やや水量は回復し、今月4日時点では約2万1000トンに回復したが、10月末には水が枯れる可能性があるという。
既に同省は島に駐在する海空自衛隊員の8割を引き揚げ、訓練も中止した。残った隊員や建設業者ら約90人は風呂に入らずシャワーは週3回、食事もレトルトという節水生活を続けており、厚生労働省などと協議し、収集活動は難しいと判断した。
硫黄島での遺骨収集は、菅直人首相が徹底を指示し、政府は昨年、特命チームを設置。今年4月から厚労省の職員数人を常駐させ、派遣隊と合わせて年間600人規模で継続的に活動する計画だったが、震災対応や水不足の深刻化で職員の常駐もできていない。
硫黄島は、旧日本兵約2万1900人が死亡した太平洋戦争の激戦地として知られる。遺骨収集は52年に始まったが、10年度までに収集されたのは約9500柱にとどまる。【鈴木泰広、青木純】
毎日新聞 2011年8月9日 2時30分(最終更新 8月9日 12時54分)