秋山監督、前日死去の母へ捧ぐ白星…ソフトバンク

　◆ソフトバンク６―１ロッテ（１１日・福岡ヤフードーム）　腕組みをしていた秋山監督の表情がようやく緩んだ。貧打に泣いていた打線が後半戦最多の１４安打。１０日に心不全で亡くなった母・ミスエさんにささぐ弔い星だが、連敗を２で止めた指揮官は普段通り。「試合をやっている時は考えてない」。ハイタッチの列に加わる姿もいつもと同じだった。

　悲しみをこらえた指揮官にナインが応えた。２点リードの４回、２死二塁から川崎、本多が連続適時二塁打。内川の四球を挟んで松中、松田も適時打で続いた。４得点に「久々につながった」と指揮官が目を細めた。３安打で今季２度目の猛打賞の松中は「特別な試合だったので、活躍できてホッとした。ゆっくり休んでもらいたい」と故人をしのんだ。

　「十分、生きたんじゃないかな。丈夫な体に生んでくれた？　遺伝だよ」。秋山監督が感謝したミスエさんは、ここ数年は入退院を繰り返していた。先週から体調が思わしくなかったが、チームへの影響を考えて「誰にも言うな」と関係者に口止め。大半のナイン、コーチ陣らには伝えていなかった。「（死に目に会えないのは）この世界に入っていた時から覚悟していた」とチームを離れなかった。

　現役時代の９４年、ＦＡ権を取得して他球団移籍を視野に入れていた際、ミスエさんが故・根本陸夫監督（当時ダイエー）に残留を説得するよう願い出た。「どうしても近くにいて欲しかった」。母の意に添い、福岡に残った。「森福がウイニングボールをくれたから、あげてくるよ」。秋山監督は試合後、故郷の熊本に向かったが、１２日には再びチームに戻り、３・５ゲーム差に広げた２位・日本ハムとの首位攻防戦の地・札幌へ向かう。

　「秋にいい報告ができるよう戦って、監督を男にしたい」と松中はナインの思いを代弁。リーグ連覇が何よりもの手向けと信じ、指揮官はチームを率いる。

　◆秋山監督の実母ミスエさんが死去
　ソフトバンク・秋山幸二監督（４９）の実母、秋山ミスエ（あきやま・みすえ）さんが１０日午後８時５０分、心不全のため熊本県八代郡内の病院で亡くなった。８５歳だった。通夜と葬儀・告別式は近親者のみで執り行われ、香典、供花は故人の遺志により辞退する。喪主は夫・辰芳（たつよし）氏。

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