【萬物相】回顧録の真実

【金泰翼(キム・テイク)論説委員】 フランスの経済学者で思想家のジャック・アタリ氏は、ミッテラン元大統領を14年にわたって補佐し、「ミッテランの携帯用パソコン」と呼ばれた。しかし、1996年に同元大統領が死去した際、アタリ氏のもとに葬儀への招待状が届かなかった。その数年前、大統領特別補佐官時代の日記を編集し出版した回顧録が問題になったためだ。アタリ氏は回顧録で、ドイツ統一の動きを知った同元大統領が「ドイツの統一は欧州を再び戦争に駆り立てる」と発言し、パニック状態に陥った、と綴った。実際にドイツ統一が実現したとき、同元大統領はイギリスのサッチャー首相(当時)に比べ、柔軟で賢い対応をしたと評されていた。そんな同元大統領は、死去するまでアタリ氏を許さなかったという。

 「チェイニー副大統領は、国政の全てを背後で操りながら、指紋を残していない」。米国のブッシュ前政権でホワイトハウス報道官を務めたスコット・マクレラン氏は退任後、回顧録にこのように綴った。また「ブッシュ大統領がイラクに侵攻した真の理由は中東の掌握であり、フセイン政権が保有する大量破壊兵器の脅威というのは言い訳だった」とも記した。ブッシュ前大統領の側近たちはこれに反発し「左派のブローカーみたいな話だ」と非難した。ブッシュ前大統領は回顧録で「チェイニー副大統領を任命したことも、イラク戦争も全て正しい選択だった」と綴った。

 一つの国を統治したり、一つの時代を築いた人たちが綴った回顧録は、ほかの何よりも史料としての価値を持つものだ。旧ソ連のフルシチョフ元書記長は、死後に米国で出版された回顧録で「6・25戦争(朝鮮戦争)は北朝鮮の金日成(キム・イルソン)首相(当時)が企画し、スターリンが承認した侵略戦争だった」と証言した。また「われわれは長い間、6・25戦争が韓国の主導で引き起こされた、と主張してきたが、今や歴史のために真実を語る」と綴った。同元書記長は、金首相が南侵計画の資料を持ってスターリンの別荘を訪れたとき、自分が報告を聞いた、と回顧録で打ち明けた。

 同じ時期、同じ出来事に関与した人物であっても、回顧録での証言が食い違うケースも多い。それぞれの筆者が、自分たちに有利な内容を誇張する一方、不利な内容を隠す傾向があるためだ。崔圭夏(チェ・ギュハ)元大統領は「大統領経験者は天に上った竜のような存在だから、在職中の出来事について語るのは正しいとはいえない」として、自らの在職中のことについて口をつぐんだ。

 盧泰愚(ノ・テウ)元大統領が最近出版した回顧録で、1992年の大統領選当時、民主自由党(現・ハンナラ党)の候補者だった金泳三(キム・ヨンサム)元大統領に選挙資金3000億ウォン(現在のレートで約210億円)を渡した、と証言した。また、1987年の6・29民主化宣言は、全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領ではなく、自分が決断したものだった、と述べた。これに対し、金元大統領側は強く否定した。一体どちらが真実なのか。後世の人たちは果たして、正しい歴史を記録することができるのだろうか。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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