コンビニエンスストア大手のローソンが12日、過疎に悩む広島県神石(じんせき)高原町にオープンする。「買い物難民」対策として町などが出資する第三セクターが経営する初の試みで、ローソン側も過疎地展開のモデルにしたいと応じた。町はローソンを拠点に商工会や地域と連携し、注文を受けて弁当や総菜などを宅配するサービスも計画している。
町は岡山県境の山間部にあり、人口約1万1千人のうち65歳以上が42%。買い物に不便な地区があり、車を運転できなくなったお年寄りのみの世帯も多い。
住民からは出店を歓迎する声が上がる。豊松地区に夫(89)と住む女性(87)は足が悪く、電動車で週1回、自宅から2キロのスーパーに行き、まとめ買いしている。「そのうち体が弱って買い物に行けなくなる。宅配になれば便利」。草木地区でひとり暮らしする男性(80)も「今は車を運転できるので遠くまで買い物に出られるが、いずれ運転できなくなるので、宅配はありがたい」と話す。
オープンするのは「ローソン神石高原町店」(約160平方メートル)。同町坂瀬川の道の駅「さんわ182ステーション」内にできる。町が57%出資する第三セクターが経営し、売り上げはローソンと分ける。
町内では以前、他のコンビニに出店を断られたといい、町は今回ローソンに打診。ローソン側には、通常は採算がとれにくい過疎地でも町が関わるなら出店しやすいとの事情のほか、高齢の客層を開拓したい意図もあるという。広報担当者は「買い物難民の増加は今後全国的な問題になる。神石高原町への出店でノウハウを蓄積したい」と話している。(野口拓朗)