東日本大震災を受け、陸上自衛隊が54年前から隊員の食料としてきた赤飯の調達をやめた。「祝いごとで食べる赤飯を被災者の前で食べるわけにはいかない」という隊員の声がきっかけになった。「腹持ちがいい」と人気もあっただけにメニューから消えるのを惜しむ声もある。
陸自によると、隊員が訓練や災害派遣時に野外で食べる「戦闘糧食」は「缶飯(かんめし)」と呼ばれる缶詰とレトルトパックがある。主食は白飯、赤飯、とり飯、五目飯、しいたけ飯、小型乾パンの6種類で、赤飯の缶飯は自衛隊発足3年後の1957年に採用された。年間調達量は缶飯約26万食、レトルト約7万食に上っていた。
赤飯は阪神大震災や新潟県中越地震の際にも批判的な見方があり、災害派遣ではなるべく使わないよう配慮されてきた。全国から前例のない規模の部隊が派遣された東日本大震災では、配給した赤飯の缶飯の返品が隊員から相次いだ。陸自担当者は「今後も大規模震災が危惧される中、被災地で活動する隊員が被災者らに気を使うことなく食事ができるように、赤飯はやめたほうがいいと判断した」という。
また、航空自衛隊も「被災者に誤解を与える可能性があり、支援で提供もできない」として缶飯から赤飯を外すことを決めた。
一方、海上自衛隊は災害派遣時も艦艇内での食事が多いことなどから「赤飯の缶飯の廃止は検討していない」という。【鈴木泰広】
毎日新聞 2011年8月11日 15時00分(最終更新 8月11日 16時11分)