経済産業省傘下の資源エネルギー庁(エネ庁)は、「平成23年度原子力安全規制情報広聴・広報事業(不正確情報対応)」として、原発や放射能に関するツイッターやブログへの書き込みに対するモニタリングを開始する。実務を行なうのは、7月半ばに行なわれた入札で、来年3月までの契約を約7000万円で落札した某大手広告代理店だ。
その目的は、同庁のホームページにこう記されている。
<ツイッター、ブログなどインターネット上に掲載される原子力等に関する不正確な情報又は不適切な情報を常時モニタリングし、それに対して速やかに正確な情報を提供し、又は正確な情報へ導くことで、原子力発電所の事故等に対する風評被害を防止する>
エネ庁といえば、国の原子力政策を推進する立場。広告代理店と手を組み、自分たちにとって都合の悪い情報の発信源を監視するということか。同事業を所轄するエネ庁原子力立地・核燃料リサイクル産業課はこう説明する。
「まず『監視』ではありません。『情報収集』です。あくまでツイッターをはじめ、ネット上で今、原子力に関するどんな風評被害が広がっているのかを調査するためのモニタリング。最終的にはそこに集まった誤った情報や不適切な情報をもとにQ&A集を作り、正確な情報を国民に広く伝えます」
と、あくまで原子力発電の風評被害を防ぐことが目的だという。だが、別の経産省の職員がこう釘を刺す。
「ネットを監視するのだから当然、自分たちにとって都合のよい検索ワードを決めて『不適切な情報を抽出』するつもりでしょう。要するに、国が原発政策を進めやすい最適な情報だけを流通させるというのが本当の狙い。これでは公権力による“ネット検閲”と受け取られても仕方がありません」
しかも、こうした“監視事業”の対象はツイッターやブログだけではない。実はすでに昨年、新聞がその標的となっていたのだ。地方記者がこう語る。
「エネ庁は全国紙5紙と原発立地県にある地方紙20紙を対象に、原子力に関する掲載記事を監視していました。そのうえで不適切な記事が発覚した場合には訂正情報を作成してホームページに掲載していたのです」
正しい情報への誘導か、それとも情報統制か。しばらくは、国民による“監視”が必要だ。
(写真/井上賀津也)
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