東京電力福島第1原発事故が収束しない福島県は苦難の夏を迎えている。4万8903人(7月28日現在)が県外避難を余儀なくされ、少しでも被ばくを減らそうと夏休み中に「疎開」する子供も多く、公園などから子供の姿が消えた街も。特産のモモや観光も大打撃を受け、被害は拡大を続けている。
「行ってきます」。伊達市で8日、小中学生14人が笑顔でバスに乗り込み、愛知県に旅立った。同県の支援団体の招待で2週間、プール遊びや運動会などで過ごす。
伊達市には放射線量が高い「ホットスポット」がある。小学3年生の長女を参加させたデイサービス施設管理者、長正浩明さん(36)は「外で思う存分遊ばせてストレスを発散させてやりたかった」。小学5年生と3年生の娘2人を参加させた女性(41)は「帰ってきてからが心配。簡単に転校もできないし」と顔を曇らせた。多数の団体が同様の支援を実施している。
震災から7月15日までに小中学生7672人が県外へ転校。夏休み中にはさらに1081人が続く。私立幼稚園からは約2000人が県外に移った。
県内には例年、修学旅行や合宿などの教育旅行で年間約8000団体延べ約70万人が訪れる。だが、県観光物産交流協会によると、今冬以降のキャンセルも相次ぎ、今年度は95%減になる見込みだ。2~3年後の予約も取り消され始めた。
山梨県に次ぎ全国2位の生産高を誇るモモは収穫の最盛期だが、風評被害に苦しんでいる。福島市観光農園協会(片平新一会長)によると、百貨店のお中元カタログに掲載されず、贈答用の売り上げが大きく減少。販売店や観光果樹園が並ぶ同市の県道「フルーツライン」も客足はまばらだ。片平会長は盆休みの客を昨年の1割程度と見る。果樹園を営む紺野淳さん(59)は「モモは熟れるのを待ってくれない。作り続けるだけ」と収穫を続けた。【山田奈緒、関雄輔】
毎日新聞 2011年8月10日 21時30分