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証言/焦点 3.11大震災
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焦点/あす震災5ヵ月/我が家遠く、疲労濃く

東日本大震災の発生から、あすで5カ月。いまだに大勢の被災者が避難所暮らしを強いられている。ハエや蚊の発生に悩み、家族ごとに蚊帳をつる避難所もある=9日午後7時ごろ、石巻市の石巻中体育館

ミカン箱をテーブル代わりに配給の弁当を食べる藤原さん夫婦=8日午後、石巻市門脇中

愛犬とともにテント生活を続ける男性=7日、気仙沼市の気仙沼市民会館駐車場

 東日本大震災は11日、発生から5カ月となる。大津波の爪痕は深く、被災地では今なお避難所生活が解消されていない。岩手、宮城両県の避難所は計300カ所に上り、9500人余りが避難所生活を強いられている。疲労感を濃くする被災者は少なくなく、県外へ避難した人も多い。福島第1原発事故は収束のめどが立たず、福島県では大規模な避難が続く。

◎避難所生活なお9500人 岩手・宮城/県外暮らし4万8900人、福島

 宮城県によると、県内の避難所は210カ所で、避難者は7950人(9日現在)。仮設住宅の建設が遅れている石巻市は、69カ所の避難所に2788人が身を寄せる。
 暑い日が続く中、避難所の空調設備は十分でなく、衛生面の課題を抱える所も少なくない。長引く避難所暮らしに被災者は「こんなに長期になるとは」といら立ちを募らせている。
 宮城県内で必要とされる仮設住宅2万2054戸(市町村発注分を含む)は、9月中旬にほぼ完成する見通し。3日現在で県発注分の2万1529戸が着工、1万7276戸が完成した。県外への避難者は7714人を数える。
 岩手県によると、県内の避難所は90カ所で、避難者は1580人(4日現在)。県外避難者は7月25日現在で1444人。主な避難先は東京都246人、埼玉県191人、神奈川県151人、千葉県150人などと首都圏が目立つ。
 県復興局によると、仮設住宅は9日現在、1万3833戸が既に完成。12日までに工事を終え、建設を予定した1万3983戸が全て完成する見込み。月末にも全ての被災者が入居できる態勢が整う見通しだ。

 福島県内では9日現在、避難所29カ所に1079人が身を寄せている。ホテル・旅館などの2次避難を含めると、県内の避難者総数はなお9379人に上っている。
 内閣府によると、県外に避難しているのは4万8903人(7月28日現在)。同14日の調査時点より約2600人増えた。主な避難先は山形7712人、新潟6738人、東京5640人、千葉3101人、栃木2678人。
 福島県は避難先の自治体と住民との橋渡し役として、山形や新潟など14都県の災害対策本部に職員36人を派遣。自主避難者の増加に伴い、避難先で民間の借り上げ住宅制度を適用してもらえるよう働き掛けている。
 住民約1万6500人が県外に避難する南相馬市は新潟と群馬、宮城、山形各県に開設された1次避難所に職員20人を配置。義援金の申請受け付けや生活情報の提供を行い、帰宅を希望する住民の相談にも乗っている。
 一方、推計で約2000人が県外に避難する郡山市など中通りの自治体は、避難者の実態把握も進んでおらず具体的なサポート策を打ち出せないでいる。
 県の県外避難者支援チームの塩見俊夫リーダーは「子どもが夏休みに入り、避難区域ではない地域からも自主避難者が急増している。自治体に届け出ないまま避難する住民も多く、実態把握や情報提供が難しい」と話す。

 東日本大震災の発生から5カ月になろうとする今も、宮城県内では8000人近い人々が避難所生活を強いられている。車がないために郊外の仮設住宅を敬遠し、避難所に取り残される高齢者が目立つ。統計には表れないものの、さまざまな事情で避難所に入れず、車中生活やテント生活を送る人々もいる。それぞれの過酷で長い避難生活を取材した。(成田浩二、高橋鉄男)

◎行き場のない被災者

<郊外の仮設、車なく不便/暑さに耐えて今も避難所に/石巻・70代の夫婦>
 「こんなに長く暮らすことになるなんてね」
 約200人が避難所生活を送る石巻市門脇中。同市双葉町の無職藤原明さん(73)、一子さん(72)夫婦の表情には、疲労が色濃くにじむ。
 頭上には、大量発生したハエ、蚊対策のハエ取り紙。エアコンのない体育館では約20台の扇風機が回っているが、連日の暑さは確実に高齢者の体力を奪っている。「夜もなかなか寝付けない。熱中症にならないよう、保冷剤を枕に置いて寝ている」と明さん。
 先日夜、急に体調を崩し、吐き気が続いた。疲労から脱水症状になったとみられ、病院で点滴治療をしてもらった。今も薬と栄養剤を手放すことができない。
 一子さんも持病で2週間に1回、病院に通う。脚が弱く、高台の避難所と病院の間の坂道が苦痛になっている。
 借家の自宅は津波で床上浸水し、住めなくなった。郊外の仮設住宅には空きもあるが、車のない2人には、通院や買い物に不便すぎる。
 子どもはなく、頼れる人もいない。中心部の仮設に申し込んでは落選する繰り返し。民間の借家も適当な物件はなく、好立地の仮設に入居できる日を待つしかない。
 明さんは「避難所の皆さんには良くしていただいている。でも、いつまでもここにいられない。焦っても仕方ないと思うが…」と揺れる胸の内をのぞかせる。
 石巻市内では約2800人が避難所で暮らしている。藤原さん夫婦のように車を持たない高齢者が、中心部の仮設住宅への入居を待っているケースが目立っている。
 市は9月中旬までに必要とされる戸数の仮設住宅整備を終え、同月末には全避難所を閉鎖する方針。だが、「用地が限られているため、必ずしも希望通りの場所に入居できるとは限らない」(避難所運営対策室)。市は仮設住宅と商業施設、医療機関などを巡回するバスの運行などを検討するという。

<仮設抽選、外れ続け…/愛犬と生活、避難所は遠慮/気仙沼・テント暮らしの男性>
 避難所になっている気仙沼市民会館(気仙沼市)の駐車場で、男性(52)は飼い犬のシベリアンハスキー「テン」と生活している。
 ワゴン車の隣にテントを張る。折り畳みベッドやガスコンロを並べ、夜はランタンをともす。
 仮設住宅への入居を希望しているが、抽選には外れ続けている。テント生活を始めてから、3カ月以上になる。
 市内で自営業をしていた男性は、震災で仕事と家を失った。犬のテンは「唯一の家族」。市はペットを同伴できる避難所も用意したが、大型犬は邪魔になるだろうと入所を諦めた。ペット業者に一時的に預けるのもつらかった。
 5月上旬にたどり着いた駐車場には、ペットと過ごす車中生活者がほかにもいた。うわさを聞いた人々で「車中泊村」ができた。
 食事は避難所から配給を受けたが、テントで生活しているため避難者と認められず、洗濯機やシャワーは使えない。避難所にごみの持ち込みを断られたこともある。
 愛犬のために余儀なくされたテント生活。だが半面、追い詰められた心を救ってくれたのもテンの存在だ。
 「ちゃんとご飯を食べていますか?」。テンの姿を見て、名前も知らない市民やボランティアが物資を提供してくれた。
 「テンのおかげで同じ境遇の人々と絆もでき、孤独にならずにすんだ」と男性。駐車場で暮らす人は一時10人近くいた。徐々に仮設住宅に移ったが、今も数人が残る。
 「こんな生活をしている人が、被災地にはまだいる。震災があっても、ペットと一緒に暮らせる環境ができることが願いです」
 男性はそう言いながら何度もテンをなでた。


2011年08月10日水曜日

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