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英暴動:格差拡大、若者に閉塞感 ソーシャルメディアを利用

 8日夜から9日未明にかけ、ロンドン市内で続いた略奪や建物の炎上という異常事態に市民はショックを受けている。過去数十年で「最悪の事態」は来夏の五輪開催に向けてロンドンのイメージダウンを招きかねない。背景には経済格差が拡大する中で「失うものが何もない」(フィナンシャル・タイムズ紙)若者層の閉塞(へいそく)感が指摘されるが、ソーシャルメディアの普及が暴動の急速な拡大につながった側面もありそうだ。

 ロンドン警視庁によると、主にスマートフォン「ブラックベリー」の匿名メッセージ機能で集結場所や時間が伝達されているという。メッセージには「店を破壊して、ただで品物を持ち帰ろう」などと略奪をあおるものが目立ち、政治、人種的な動機の伝言はほとんどないという。

 タイムズ紙は9日の社説で「ロンドンは現実のコンピューターゲームのようになった。暴徒らは単に夏の夜を楽しもうとしている」と指摘した。

 ロンドン市内で暴動が起きているのは、北部トットナムや東部ハックニーなど黒人や南アジア系の住民らが混住し、失業や貧困層の多い地域が目立つ。参加者は10代、20代の若者が中心で、経済格差が拡大する中で、教育面などで社会上昇の機会から取り残された若者も多いようだ。

 政府が財政再建のために超緊縮財政を断行する中で、青少年支援事業などへの予算が大幅にカットされている余波が暴動をあおる一因になっているとの指摘もある。メディアは「僕たちには仕事も金もない」「(略奪で)税金を取り返してやる」などと暴動に加わった若者の声を報じている。

 警察の“ソフト”な対応を批判する声も強い。英警察は90年代に黒人らへの「人種差別体質」を厳しく批判された経緯もあり、デモや暴動の対応に慎重とされている。【ロンドン笠原敏彦】

毎日新聞 2011年8月10日 東京朝刊

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