東日本大震災で被災した人々を助けたいと、米国南西部に住む先住民インディアンの有志団体が10日から、米・ニューメキシコ州でチャリティーイベントを開催する。約120の部族が参加し、震災の犠牲者に黙とうをささげるほか、Tシャツなどを販売、収益を義援金に充てる予定だ。日本側でもイベントを支援する活動が始まり、日米両国で友情の輪が広がっている。
イベントに参加している一人が、つくば市でインディアン・ジュエリーショップを経営する金田淳さん(50)。5月に渡米した際、友人のリンドン・ツォシーさん(46)から「義援金の送り先を教えてくれないか」と尋ねられ、初めてインディアンの有志が義援金を集めていることを知った。41人のアーティストがインターネットオークションを通じてアクセサリーなどを売り、既に約5万ドル集まったという。
金田さんによると、同州内に住む先住民の平均年収は約2万ドル。「彼らの生活水準からすればとんでもない額。オレも何かしなければ」。都内の知人と「インディアン・フレンドシップ・プロジェクト」を起こし、義援金活動を始めたチェスター・ベナリーさん(46)らと考案したTシャツを販売するようになった。
心に引っかかっていたことがあった。先住民のナバホ族は第二次世界大戦中、対日戦で暗号通信員として使われ、日本軍に殺害された人もいると聞かされた。知人から「日本人と名乗らない方がいい」と忠告すら受けた。
7月5日、同州で開かれたイベントの実行委員会の集会には約50人が参加した。金田さんが戦時中の暗号通信員のことに触れると、和やかだった雰囲気が一変し、重い空気が漂った。沈黙を破ったのは、元暗号通信員をよく知る参加者だった。「それは過去のこと。今は友達だ」
イベントはインディアンが毎年開催する伝統行事の中で、14日まで行われる。金田さんは「このプロジェクトを通じて友情の輪が広がれば」と期待をこめている。【杣谷健太】
毎日新聞 2011年8月10日 地方版