東京地検特捜部:「全面可視化」初の起訴…特別背任事件で

2011年6月13日 21時30分

 東京都港区の不動産ファンド事業会社「セレアセットアドバイザーズ」(CAA)を巡る特別背任事件で、東京地検特捜部は13日、同社元取締役、徳島政治容疑者(47)を会社法違反(特別背任)罪で起訴した。中村勉弁護士によると、特捜部は逮捕直後から起訴までの取り調べ全過程で録音・録画(可視化)を実施した。最高検は4月、特捜事件を対象に、全過程を含む録音・録画を試行する方針を表明したが、実施は初めてとなる。

 起訴状によると、徳島被告は08年11月ごろ、CAAが保有する賃貸ビルを都内の不動産管理会社に売却する際、知人の会社を介在させて得た転売益を自分の管理口座に振り込ませ、自社に5000万円の損害を与えたとしている。

◇弁護士は評価、検察に抵抗感

 国内の刑事事件で初めて行われた初の「全面可視化」。検察OBの中村弁護士によると、逮捕直後に言い分を聴く「弁解録取」の場面から始まり、勾留先の東京拘置所で90~120分の取り調べを1日2回、ブルーレイディスクに記録した。検察事務官が2重の封筒に入れて日時ごとに封印し、被告が毎回署名。計60時間以上に及び、複数の検察幹部がコピーディスクを見て、状況を逐一チェックしたという。

 被告は「自分の主張が言いやすい」と肯定的といい、中村弁護士も「録画されている安心感があるし、取り調べのプレッシャーも軽減する」と評価した。ただ、ディスクは証拠開示後に弁護士もチェックするが、「弁護士には相当の負担になるだろう」と話す。

 検察内部では、機器を途中で止められない可視化に、戸惑いや抵抗感が強い。幹部の一人は「ていねいに調べをやっているのだろうが、検事が萎縮しているようにも見える」と言う。中堅検事は「容疑者が根拠のない疑惑や個人名を話し始めてもとり続けるしかない。今後、法廷でプライバシーがあらわになるケースも出るだろう」と懸念する。

 取り調べの録音・録画の試行は4月、東京地検など3特捜部で始まった。最高検は約1年かけて検証結果をまとめるとして、どの事件で実施したかを明らかにしていないが、東京では徳島被告の事件以外に、「一部可視化」が計2件で行われた。だが、被告が1人であるなど比較的単純な構図の事件が対象だ。ある法務・検察幹部は「複雑な事件での試行が進めば、長所、短所がはっきり見えてくるのではないか」と話す。【鈴木一生、島田信幸、山田奈緒】

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