注意!(1) データの無断転用,引用、商用目的の利用は厳禁.(2) 以下の情報は現時点(最終更新日時)で調査できた素材の科学論文情報です. 実際に販売されている商品に以下の素材が含まれているとしても,その安全性・有効性がここに紹介した情報と一致するわけではありません.(3) 詳細情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してありますが,この情報をヒトに直接当てはめることはできません.有効性については,ヒトを対象とした研究情報が重要です.(4) 医療機関を受診している方は,健康食品を摂取する際に医師へ相談することが大切です.「健康食品」を利用してもし体調に異常を感じたときは、直ぐに摂取を中止して医療機関を受診し,最寄りの保健所にもご相談下さい.
項 目
内 容
名称
オオアザミ(マリアアザミ、オオヒレアザミ、ミルクシスル) [英]Milk thistle [学名]Silybum marianum(L.) Gaertn. キク科[オオアザミ属]
概要
オオアザミは南ヨーロッパ、北アフリカ、アジアに広く生息する2年草で、ヨーロッパでは2000年以上も前から、主に肝臓の疾患などに対して、薬用部分である果実(オオアザミ実)が使用されている。オオアザミの中国語名は「乳薊子」である。俗に「肝臓、膵臓の疾患に効く」などといわれ、ドイツのコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)は、消化不良や肝障害に対する使用を承認している。適切に摂取する場合には安全性が示唆されているが、まれに下痢や胃腸障害、アレルギーなどを起こすことがある。その他、詳細については、「すべての情報を表示」を参照。
法規・制度
全草は「非医薬品」に区分される(30)。
成分の特性・品質
主な成分・性質
種子の成分はシリマリン(Silymarin)と呼ばれる4種のフラボノリグナン類(flavonolignans)すなわちシリビニン(silybinin)またはシリビン(silybin)、イソシリビニン(isosilybinin)、シリクリスチン(silichristin )、シリジアニン(silidianin)からなり、約70%はシリビニンが占める。他に多量のリノール酸(linoleic acid)、オレイン酸(oleic acid)、ミリスチン酸(myristic acid )などからなる不揮発性油を16-18%含む。
分析法
-
有効性
ヒ ト で の 評 価
循環器・呼吸器
調べた文献の中で見当らない。
消化系・肝臓
・コミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)において、粗抽出物は消化不良への使用が、標準化製品は消化不良、慢性肝炎、肝硬変への使用が、それぞれ承認されている(58)。 ・オオアザミは肝臓障害を引き起こす毒キノコ(Amanita phalloides) による肝毒性に対し、静脈注射で有効性が示唆されたとの予備的な報告があるが、この現象については更なる検証が必要である(66)。 ・トルエンやキシレンなどの有機溶媒による肝障害に有効であるとの予備的な報告があるが、この現象については更なる検証が必要である(66)。 ・オオアザミの摂取はアルコール性肝障害に有効であるとの報告があるが、相反する情報もあるため、この現象については更なる検証が必要である(66)。 ・2003年12月までを対象に、4つのデータベースで検索可能な無作為化比較試験13報をメタアナリシスしたシステマティックレビューにおいて、オオアザミにはアルコール性肝炎およびウィルス性肝炎(B型・C型)による死亡率、合併症の発生率、肝臓の組織的変化を低減する効果は認められなかったという報告がある(PMID:15846671)。 ・アルコール性肝硬変患者125名(試験群57名、スペイン)を対象とした無作為化二重盲検多施設試験において、シリマリンを450mg/日、2年間投与したところ、肝機能には影響がなく、アルコール性肝硬変を改善しなかったという報告がある(PMID:9566830)。
糖尿病・内分泌
・アルコール性肝硬変を併発している糖尿病患者を対象とした対照試験(試験群30名、イタリア)において、シリマリン200mg×3回/日、4ヶ月間摂取させたところ、血糖値やHbA1cなどが低下したとの報告がある(PMID:9126802)(66)。
生殖・泌尿器
・閉経前の女性30名(試験群15名、21-45歳、平均34.7歳、アメリカ)を対象とした二重盲検無作為化プラセボ比較試験において、ウコン100mg、チョウセンアザミ100mg、ローズマリー100mg、オオアザミ100mg、セイヨウタンポポ100mg、チョウセンゴミシ50mgを含有するカプセルを4カプセル×2回/日、4月経周期間摂取させたところ、卵胞期初期のデヒドロアンドロステロンが低下したが、他の性ホルモンに影響は認められなかったという報告がある(PMID:17684134)。
脳・神経・感覚器
免疫・がん・炎症
骨・筋肉
発育・成長
肥満
その他
調べた文献の中で見当たらない。
参 考 情 報
試験管内・ 動物他での評価
・肝障害の動物モデル実験で肝障害を防ぐことが報告されている(17)。 ・シリマリンの肝保護活性は、さまざまな物質で誘発された多くの肝障害モデルにおいて実証されており、そのメカニズムも複数解明されている(23)。
安全性
危険情報
・経口摂取で適切に使用する場合は安全性が示唆されている。70-80%シリマリン含有標準化製品は41ヶ月間まで安全であった(66)。但し静脈注射におけるオオアザミの安全性については、十分な情報が得られていない(64)。 ・妊娠中および授乳中の使用の安全性については十分な情報がないため、使用を避ける(66)。 ・時々見られる副作用として下痢がある。また非常にまれに吐き気や腹痛、鼓腸など胃腸への作用を引き起こすことがある。まれにアレルギー反応を起こす人がいるが、これはキク科の植物にアレルギーを持つ人に多い(64)。 ・69歳女性(オランダ)がオオアザミを含むハーブ製剤(詳細不明)を6-15錠/日、6週間摂取したところ、吐き気や掻痒(かゆみ)、黄疸などの症状を呈したという報告がある(PMID:8688761)。 ・57歳女性(オーストラリア)がオオアザミを含む製品(詳細不明)を2ヶ月間摂取したところ、吐き気や嘔吐、疝痛性腹痛、水様性下痢などの症状を呈したという報告がある(PMID:10092919)。
禁忌対象者
医薬品等との 相互作用
・理論的にはエストロゲンと併用するとエストロゲンの排泄を早める可能性がある。また、グルクロン酸抱合を受ける医薬品との併用で、それら薬剤の排泄を遅らせる可能性がある(64)。 ・オオアザミはチトクローム(Cytochrome)P450(CYP2C9)を阻害すると考えられるので、併用に注意を要する医薬品は多数ある(66)(63)。 ・25歳白人男性が、アスピリン75mg/日とニンニク、オオアザミを含むタブレットを2週間併用したところ、鼻血が止まらなくなったという報告がある(PMID:19451826)。 ・オオアザミはエストロゲン様作用を持つので、女性ホルモン感受性のがんなどを持つ人は使用を避けること(64)。 ・キク科植物と交差アレルギーがあると思われるので、キク科植物に感受性の高い人は注意して使用すること(64)。 ・他のハーブやサプリメント、食品との相互作用や臨床検査に対する影響は知られていない(64)。 ・メタボリックシンドローム患者101名を対象とした無作為化プラセボ比較試験(チェコ)において、シリマリン0.8g/日とヤーコン2.4g/日(試験群15名、54.5±10.0歳)もしくはシリマリン0.6g/日とマカ0.2g/日(19名、51.4±8.0歳)を90日間併用しても、悪影響は認められなかったという報告がある(PMID:18054420)。
動物他での 毒性試験
1.LD50(半数致死量) オオアザミ抽出物を投与:マウス腹腔内681mg/kg(91)。 2.TDLo(最小中毒量) オオアザミ抽出物を投与:ラット経口18.3kg/kg/2年、マウス経口36.5kg/kg/2年(91)。 3.その他 ・培養肝細胞において、シリマリンまたはシリビンによる細胞毒性作用が認められたという報告がある(63)。
AHPAクラス分類 及び勧告
クラス1(22)。危険情報の項目を参照。
総合評価
・経口摂取で適切に使用する場合は安全性が示唆されている。 ・妊娠中および授乳中の使用の安全性については十分な情報がないため、避けるべきである。 ・経口摂取で時々見られる副作用として下痢がある。また非常にまれに胃腸への作用を引き起こすことがある。まれにアレルギー反応を起こす人がいるが、これはキク科の植物にアレルギーを持つ人に多い。
(注:下記の内容は、文献検索した有効性情報を抜粋したものであり、その内容を新たに評価したり保証したりしたものではありません。) ・糖尿病と消化不良に対して経口摂取で有効性が示唆されている。 ・標準化製品はコミッションE(ドイツの薬用植物の評価委員会)において、消化不良、慢性肝炎と肝硬変への使用が承認されている。
参考文献
(17) 天然薬物辞典 廣川書店 奥田拓男編 (22) メディカルハーブ安全性ハンドブック 東京堂出版 林真一郎ら 監訳 (23) 天然食品・薬品・香粧品の事典 朝倉書店 小林彰夫ら 監訳 (30) 「医薬品の範囲に関する基準」(別添2、別添3、一部改正について) (58)The Complete German Commission E Monographs (64) 健康食品データベース 第一出版 Pharmacist's Letter/Prescriber's Letterエディターズ 編 (独)国立健康・栄養研究所 監訳 (PMID:15846671) Cochrane Database Syst Rev. 2005 Apr 18;(2):CD003620. (63)ハーブ&サプリメント NATURAL STANDARDによる有効性評価 産調出版株式会社 渡邊昌日本語監修 (PMID:9566830)J Hepatol. 1998 Apr;28(4):615-21 (PMID:8688761)BMJ. 1996 Jul 13;313(7049):92 (PMID:10092919)Med J Aust. 1999 Mar 1;170(5):218-9 (PMID:18054420) Food Chem Toxicol. 2008 Mar;46(3):1006-13. (PMID:17684134) Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2007 Aug;16(8):1601-9. (PMID:19451826) Eur J Emerg Med. 2010 Feb;17(1):17-9. (66) Pharmacist’s Letter/Prescriber’s letter Natural Medicine Comprehensive Database(2006) (91) Registry of Toxic Effects of Chemical Substances (RTECS) (PMID:9126802)J Hepatol. 1997 Apr;26(4):871-9.