ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン福島> 記事

福島野菜 熱い東京

2011年08月09日

写真

路上販売に訪れた女性と会話する斉藤登さん=東京都調布市

写真

築地場外市場にできた玉川村の農産物直売店。開店初日から大勢の買い物客が集まった=6日、東京都中央区築地4丁目、西村写す

 ●「単身」ワゴン車、路上で/二本松のキュウリ農家 風評被害避け直売

 原発事故の影響で県産の野菜は売れ行き不振に悩む。全国2位の収穫量を誇るキュウリも同様だ。風評に左右されがちな市場を通さず直接消費者に届けようと、キュウリ農家が1人、東京に乗り込んだ。

 東京都調布市の住宅街。キリスト教系幼稚園の前に福島ナンバーのワゴンが止まった。「慈悲深い人が多いと思って」。二本松市で「二本松農園」を経営する斉藤登さん(52)が、段ボールに詰めた野菜を並べ始めた。

 この日、首都圏での路上販売の挑戦が始まった。両手でキュウリを掲げ「福島で昨日とった、新鮮なままです」。遠巻きに見ている主婦らに「アスパラガス、すごい人気です」「生しいたけ、プリンプリンですよ」。手にとっては声をかけ、おじぎした。

 エシャロットやタマネギ、山菜も並ぶ。「曲がったキュウリは10円ですって」「立派なアスパラね」。袋いっぱい野菜を詰めた女性たちが列を作った。

 初日は2カ所で約5万円の売り上げ。ある女性客は「福島の力になりたいけど、スーパーでは無意識に他県産を手に取る」と打ち明けた。「気持ち、わかりますよ」と斉藤さん。「きっかけは支援の気持ちでいい。でも、これからは本当においしいもの、新鮮なもので勝負しないと」。毎週金曜、同じ場所で販売すると決めた。

 斉藤さんは県庁勤めを50歳で切り上げ、実家の農園を継いだ。畑は3ヘクタール、従業員やパート約10人を雇う。7月中旬以降に出荷する露地ものキュウリを中心に、冬から春にかけてはホウレンソウも生産している。

 原発事故後、ハウス栽培のキュウリが市場で暴落。1箱2千円が250円まで落ち込んだ。何が起こっているのかと都内のデパートに足を運んだが、福島産は見当たらない。卸業者が店に持ってこないと聞かされ、「消費者の前にすら届いていなかったのか」と驚いた。

 「直接、消費者に届ける販路がないと、生き残れない」。3月末、ホームページで野菜や果物の通販を始めた。今回、仲間の野菜も買い取り、路上販売に乗り出した。

 繁忙期には5キロのキュウリを毎日250箱出荷してきた。直販では3分の1も売りさばけないし、コストを考えれば赤字も覚悟している。それでも「動いてみないと何も変わらない」。次は首都圏に常設売り場を設けようと考え、都内で従業員を雇った。(西村圭史)

 ◎特殊農法トマト目玉に/築地場外市場 玉川・「日本一」産直店

 東京・築地場外市場に玉川村の農産物直売店が6日、オープンした。復興に役立ててもらおうと、同市場商店街振興組合が空きスペースを店側に無償で貸し出した。「緑の駅」の看板と「がんばろう ふくしま」ののぼり。「新鮮野菜、どうぞー」という威勢のいい声に買い物客が引き寄せられている。

 直売店を運営するのは、福島空港近くの「道の駅たまかわ」(玉川村)にある「こぶしの里」。30坪の売り場で年約2億円の売り上げがあり、1坪あたりの売り上げで「日本一の直売所」を自負する。

 契約農家から仕入れる新鮮さと安さに加え、独自に開発した加工品が人気の秘密だ。透き通った「トマトジュース」は、2006年度の「ふくしま特産品コンクール」の県知事賞に輝いた最大の人気商品。水を与えない特殊農法で育てたトマトから生まれる。

 築地の10畳ほどの売り場には、トマトやキュウリ、インゲン豆といった野菜や、マスカットに似た味の「さるなしジュース」、キュウリのラー油づけ「かっぱラー」などの加工品が並ぶ。年中無休で営業は午前5時〜午後3時。マネジャーと店員2人の計3人が常駐し、1日20万〜30万円の売り上げを目指す。

 震災後、玉川村の「こぶしの里」は売り上げが3割ほど減ったが、7月以降はかなり客足が戻ってきたという。築地のスペースを無償で借りられるのは来年3月までの限定。今回の出店を「首都圏への足がかりに」と語る所長の穂積俊一さん(52)は「ホテルやレストラン向けにトマトの箱売りを用意するなど、品ぞろえも売り方も工夫したい」と張り切っている。

 隣のスペースには、宮城県のNPO法人などが連携し被災地支援にあたる「NPO連携・宮城復興支援センター」の直売店が開店。ワカメや昆布、牛タン、長ナス漬けといった被災企業の加工品や農産物、海産物を並べている。(西村隆次)

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり