慢性疾患の患者が集まったワークショップ=名古屋市で
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慢性の病気の患者が集まり、病気とうまく付き合いながら、少しでも前向きに、快適に過ごす方法を学ぶ「セルフマネジメントプログラム」が広がっている。患者の生活の質を高める取り組みの一つだ。 (佐橋大)
名古屋市の社会保険中京病院で六〜七月、セルフマネジメントプログラムのワークショップ(勉強会)が開かれた。
週一回、六回で一セット。日本で普及に取り組むNPO法人「日本慢性疾患セルフマネジメント協会」(東京都港区)の主催。参加した患者十二人の病気は、1型糖尿病、線維筋痛症、関節リウマチなど。いずれも完治しにくい慢性の病気だ。
慢性疾患の患者は、仕事や食事、運動の制限など、病気によって生活にさまざまな支障を抱える。病状の悪化で、その影響が広がらないかと、将来への不安も強い。
マイナス思考に陥り、うつ状態になる人もいる。生活習慣に関係なく発症する病気が多く「なぜ自分だけ」と、わが身を恨む人も。理不尽な運命を受け入れられず、治療に積極的になれない人もいる。
ワークショップでは、病気で生じる不安やマイナス思考への対処法、服薬などの自己管理の手法を、患者同士が会話の中で見つけ、身に付ける。やりとりの質を保つため、研修を受けた慢性疾患の患者が進行役を務める。
参加者の一人、孝代さん(51)=仮名=も「なぜ自分だけ」と悩んでいた一人だ。
孝代さんは四年前、骨折や打撲などの外傷がきっかけとされる「反射性交感神経性ジストロフィー」を発症し、焼け付くような痛みに苦しんでいる。肩から右半身に広がった痛みのため、家事も日常生活も満足にできない自分にいら立ちを募らせた。
暗闇の中にいる感じだったときに、ワークショップに参加。そこで、他の病気の患者もそれぞれに苦しさを抱えながら、前向きに生きていることを知った。同じ事柄でも人により捉え方が違うことにも気付いた。病気のマイナス面ばかりに目が向いていたが、「痛みの分かる人間になったことを生かして、社会に貢献できるかもしれない」と考えられるようになった。
1型糖尿病の友子さん(34)=仮名=も、ワークショップで自身が変わったと感じた。1型糖尿病は、自己免疫の異常で、血糖値を調節するホルモン、インスリンが分泌されなくなる原因不明の病気。一日四回のインスリンの注射が欠かせない。
病気のために周囲に気を使われるのが、友子さんは嫌だった。友人が会食場所を選ぶ際に、それを感じることもあった。これに対し、ワークショップの参加者からは「健康を気にしてくれる友達がいていい」との感想も。友子さんは「角度を変えると前向きに捉えられる」と感じた。参加前は病気に振り回され「半分うつみたいな感じ」だったが、「病気と向き合おう」という気になったという。
協会によると、参加者への調査で、身体的症状の改善はなくても、自身の健康状態で悩む患者は半減し、その効果は最低でも一年間持続したとのデータがあるという。
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