KyodoWeekly 2011/8/1号
延長国会会期末の8月31日まで残すところ1カ月―。菅直人首相は依然として具体的な退陣時期を明確にせず、「脱原発」を争点とする衆院解散・総選挙に踏み切る可能性すらくすぶり続けている。閣内や民主党執行部からの反発も一層強まり、内閣支持率は鳩山前内閣の最低を割り込んだ。菅政権はいよいよ終末期を迎えた。
▽野党時代に逆戻り
共同通信社が7月23、24両日に実施した全国電話世論調査で、菅内閣支持率は17・1%と、前回6月28、29両日調査の23・2%から6・1ポイント下落し、内閣発足後の最低を更新。これまで最低だった今年2月調査時の19・9%を下回った。鳩山前内閣崩壊直前の昨年5月末調査の19・1%をも割り込み、2009年9月に自民党から政権交代した民主党政権下での最低記録を塗り替える結果となった。
不支持率は70・6%(前回調査61・2%)で、70%台は鳩山前内閣の昨年5月末調査での73・2%以来で、もはや、菅政権が終末期を迎えていることは疑いようもない。
こればかりではない。政党支持率で民主党は14・7%と、前回調査の21・9%から7・2ポイント下落。内閣支持率同様、民主党政権下で最低を記録した。さらにさかのぼると、同水準の支持率は小泉内閣当時の06年3月に14・6%が記録されている。いずれにしろ、民主党が野党時代の支持水準に落ち込んでいることを示しており、民主党離れの進行も深刻だ。
菅首相は、東京電力福島第1原発事故を受けた今後のエネルギー政策について「脱原発」の方針を明示した。しかし、その直後、「私の考え方」として個人的な見解に修正したため、自民党は「政権の体を成していない」(逢沢一郎国対委員長)と批判、首相の足元である民主党内でも菅氏の迷走に反発が広がる。
さらに菅首相は、子ども手当の支給などを盛り込んだ民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)について、見通しの甘さを認めて陳謝。これに対し、みんなの党の渡辺喜美代表が「“マニフェスト詐欺”が確定したのだから、政権選択をやり直すのが筋だ。国民に信を問うべきだ」と、衆院解散・総選挙を求めて息巻く。政治の混乱収拾は、菅首相が退場するかどうかにかかっていることは間違いない。
▽年内解散派が微増
今回調査で、菅首相の退陣時期について「今すぐ」が26・6%(前回調査30・5%)で、「8月末の通常国会閉会時」40・3%(同37・1%)「年内で辞めるべきだ」14・0%(同10・3%)「辞めなくてよい」13・5%(同15・6%)。8月末までの退陣は計66・9%(同67・6%)に上り、前回調査と同レベルに達した。
衆院解散・総選挙の時期については「この夏、すぐに」が16・4%(同18・0%)で、「今年の秋以降、年末までに」33・5%(同30・5%)「来年以降」22・2%(同18・1%)「2013年の任期満了」21・3%(同24・7%)で、年内派が計49・9%と、前回調査計48・5%からわずかながら増加した。
▽原発の争点効果に疑問
「段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会を実現する」とする菅首相の「脱原発」方針に関しては「賛成」31・6%、「どちらかといえば賛成」38・7%の賛成派が計70・3%に対し、「どちらかといえば反対」15・6%、「反対」9・1%と反対派は計24・7%にとどまった。
「内閣を支持する」と回答した人で賛成派は計83・7%を占め、反対派は計13・9%にすぎなかった。「内閣を支持しない」人でも「脱原発」賛成派は計67・3%に上り、反対派は計27・9%。さらに政党支持別で賛成派を探ると、民主党支持層は計85・3%、自民党支持層が計59・0%、公明党支持層では計66・3%、共産党支持層は計81・6%、社民党支持層が計89・5%、みんなの党支持層では計80・6%、「支持政党なし」の無党派層は計69・5%だった。
多少の変動こそあれ、いずれの政党支持層でも、賛成派が過半数の多数を占めているとの結果からは、衆院解散・総選挙で、「脱原発」が民主党の唯一無二の“金看板”とはなり得ず、他党を突き放す単一の争点とはなりにくいのではなかろうか。
▽被災者の厳しい評価
「ポスト菅」の民主党代表にふさわしい人を聞いたところ、トップは前原誠司前外相の21・2%で、岡田克也民主党幹事長15・8%、枝野幸男官房長官15・6%。原口一博前総務相3・9%、野田佳彦財務相2・9%と続く。
民主党支持層では、枝野氏26・7%、前原氏23・6%、岡田氏22・3%、野田氏4・1%の順。野田氏は、枝野、前原、岡田3氏に大きく水をあけられた格好となった。
民主党内からは、8月上旬には代表選を、との声が上がる一方、肝心の菅首相は高校時代の同窓会で、サッカー女子ワールドカップ(W杯)で優勝した日本代表「なでしこジャパン」を引き合いに「私も負けず、いくら得点されても逆転するため頑張り抜く」と、政権運営になお強い意欲を誇示している。
しかし、今回調査のブロック別内閣支持率で、東日本大震災の復旧復興や福島第1原発事故の収束が依然としてままならない東北は一桁の6・3%(前回調査24・4%)に急落した。被災地の惨状をよそに、自己の延命のみに汲々(きゅうきゅう)とする首相の姿勢に対する被災者の厳しいまなざしがあらわになった。