この法案は、突き詰めれば「自然エネルギーで発電された電力は、電力会社が全発電量を買い取らなければならない」というもので、孫氏が安心して電力事業に進出できるのに、必要なステップとなっている。
首相のお墨付きを得た孫氏の動きは早かった。黄川田徹代議士(岩手3区)が主催する「新エネルギーに関する勉強会」には、ソフトバンク社長室の加藤幹也氏ら2名がオブザーバーとして参加するようになった。付け加えると、菅首相の側近・荒井聰元国家戦略担当相(65)の長男である優氏は、同じ社長室勤務である。
勉強会はそもそも、被災した東北の議員が集まって太陽光、風力など地産地消の新エネルギーづくりを提言する勉強会だが、ソフトバンクの動向がきな臭いとの声が上がるのだ。民主党議員が言う。
「オブザーバーだったはずの彼らから、『北海道や東北の電力を需要の大きい首都圏に直流送電で送れ』とか『北海道と本州を結ぶ海底電力ケーブルを太くしろ』など、電力系統の知識がある人間からすると、実現の可能性に首を傾げるような意見が飛び出すのです。結局、ソフトバンクとしては新エネルギー発電の設備を整えるだけで、送電網の敷設は電力会社に任せ、すぐにも参入したいということでしょう」
ソフトバンク広報室は「勉強会は黄川田事務所から誘われた。会で特に発言していない」と答えるが、前出の経産省キャリアによれば、孫氏サイドは「ソフトバンクが再生エネルギー事業に参入する代わりに」と、菅首相をはじめ国、自治体に対し、(1)土地の無償貸与、(2)固定資産税の減免、(3)再生エネルギーによる電力を買い取るよう自治体が事業者(電力会社)を説得―という条件を付けたという。
「そもそも遊休地などを利用して再生エネルギー施設をつくるプランですから、自治体は雇用創出も見込める(1)と(2)に賛成です。ただ、(3)の項目は戦略的に入れたものでしょう。そもそも国が進める事業のはずなのに、県が電力会社を相手に説得するには経産省を突き上げるしかありません。一方、菅首相は脱原発を推進させますから、国と地方自治体がダブルパンチで再生エネルギーを軌道に乗せ、電力会社のカネを引っ張り出す構図になる。孫氏はそれを計算しているのです」
実際、あるソフトバンク社員は、孫氏が「携帯(ビジネス)は基地局の設置、管理とコストがかかる。その点、再生エネルギーはほとんど国の補助で建設でき、土地まで無償貸与だから効率が良い」と発言するのを聞いている。四面楚歌で、「脱原発」しかアピールするもののない菅首相は、自身の延命のためなら簡単に条件を呑むだろう。
再生エネルギー問題は、電力会社が買い取る際、サーチャージを上乗せできるなど、事業に乗り出した孫氏は儲かるかもしれないが、消費者負担は増えるとみられ、問題をクリアしないまま実行は不可能だ。だが、菅首相は孫氏の〝傀儡(かいらい)〟になりかけている。
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