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2011-08-05 08:28:21

●「ショージとタカオ」 アットホームなドキュメンタリー

テーマ:映画

西村雄一郎のブログ


 佐賀県にも「なでしこ」がいた。井手洋子監督は、佐賀県鹿島市の出身。実家は、祐徳稲荷の参道にあるお土産物屋さんだそうだ。


鹿島高校を卒業後、明治学院大学に入学。当時はアナウンサーを志望していたそうで、発音がきれいなのは、そのためなのだろう。卒業後、ドキュメンタリーの大先輩・羽田澄子監督と出会い、彼女の助監督を勤めた。「スクリプター(記録係)にならないか」と周囲から勧められたが、ひたすらVP(企業PR作品)を作り、映像ディレクターの道をめざした。

 

  1994年、友人の紹介で、冤罪事件で収監中の2人を支援するコンサートの撮影を依頼される。その事件とは、67年に茨城県で起きた「布川(ふかわ)事件」。一人暮らしの大工が殺され、別件逮捕で桜井昌司さんと杉山卓男さんが逮捕され、自白した事件である。2人は裁判で無罪を主張したが、最高裁で無期懲役の判決が下った。


井手さんは、この2人の純真なキャラクターに興味をもち、彼らが96年に仮釈放された瞬間から、カメラを回し始める。以後、14年間の彼らを追い続けたドキュメンタリーが「ショージとタカオ」だ。昨年の「キネマ旬報」文化映画のベストワンに輝いた。


  井手さんのことは、私が教えている東京の映画の生徒さんから聞いていた。「佐賀県出身の女性作家が作った優秀なドキュメンタリーがありますよ。一度彼女に会ってみてください」と連絡を受けていたのだ。今度の佐賀市での公開を期に、帰郷された井手さんに会った。コロコロした明るい方だった。この人なら、当事者の2人も、きっと心を開いたに違いないと思った。

 

  映画は彼女自身のナレーターによって進み、劇中のアニメによる説明も、どことなくたどたどしい。しかしそこが手作り感のあるアットホームな雰囲気をかもし出す。冤罪事件といえば、「真昼の暗黒」(56年)や「帝銀事件・死刑囚」(64年)を思い出すが、ああした取調べや裁判制度を告発した〝社会派〟の映画にはなっていない。

 

  彼女の狙いは、29年間閉じ込められた獄中から出所し、〝浦島太郎的〟になってしまった彼らが、いかに社会に適合して、幸せになっていくかの生活感に重きを置いている。


出所してテレホン・カードで電話をかけるやり方が分からないタカオ。街頭演説がだんだんうまくなっていくショージ。そんな彼らをユーモラスに明るくとらえた点が異色である。その意味では前半が面白い。2人が結婚して子供ができてからは、「以前のように、自由に家庭を取材させてもらえなかった」そうだ。

 

  私は「再編集し、完全版を新たに作ってはどうか」と勧めてみた。なぜなら、事件は今年の5月に結審したからだ。結果は再審無罪となり、2人の冤罪は見事に晴らされたのである。

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コメント

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1 ■私も観ました。

意外と面白いドキュメンタリーですよね。
二人のキャラの違いが、おもしろいコントラストを醸し出していました。
去年のキネ旬文化映画のベスト1でしたね。

2 ■エンザイ(冤罪)とエン(円)の聖地、佐賀鹿島 

「日本の女優界の聖地」佐賀鹿島を舞台にした映画づくりに関わり、
佐賀の偉大なる映画人「二人の井手」(井手雅人&井手俊郎)について
知悉しているはずの西村雄一郎氏が、

井手洋子のおばちゃんレベルのブログ記事しか書けないとは残念だ。

佐賀鹿島は「日本のあるゆるモノの聖地」だが、
「冤罪」に関しても「聖地」と言える場所である。

布川事件の真相については何とも言えないが、
日本の「冤罪」の元祖とも言える事件は、明らかに「冤罪」であり、
鍋島直彬以来「正義」の語を肉付けしてきた「鹿島人」の執念で解決に導いたものだ。

「タカオと鹿島」といえば、
タカオちゃん演じる福原進監督のこっちの映画が先だ。
『少年と星と自転車』http://www.youtube.com/watch?v=uvLuhKQ_qMI

『いのちの海』のあとに制作された映画だが、
再び鹿島がロケ地になっている。

毛利敏彦先生の『幕末維新と佐賀藩』の巻末に登場する
『佐賀のがばいばあちゃん』(鶴田尚さんや太田記代子先生)が、
佐賀市内でも「暴走長崎新幹線阻止」の声を挙げておられるのに、

附属中の同級生らしい『悪人』の古川康とガチンコで闘えず、
「映画評論家」なんぞを名乗るのは止めた方がいいと思う。

「黒澤明」や「弟子丸泰仙」や「大隈重信」の顔に泥を塗るだけだから・・・。

http://unkar.org/r/koumu/1284179944/298-302

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