「やっぱりトンズラしちゃったよ」。検察庁内で、一部の上層部がこう呆れているという。矛先は、定年退官まで7年近く残し、1日付で辞職した大鶴基成・前最高検公判部長(56)に対してだ。
明らかにムリ筋だった「西松事件」や「陸山会事件」を主導し、検察不信の“元凶”をつくったとされる大鶴氏。地検特捜部の部長を務め、身分も賃金も保障された「検察官」を辞めるのは、それなりの覚悟が必要だったろう。その大鶴氏が去った検察内でなぜ、今も悶々とした空気が漂うのか。
「巨額の退職金を手にするからです。検察官の年収は、検事長一歩前の検事1号クラスで、だいたい2300万円前後。大鶴氏のように特捜部長や最高検公判部長を歴任した検事なら同じくらいの年収があったとみていい。定年退官した場合の退職金は8000万円前後だから、辞職とはいえ、残り期間がわずかの大鶴氏は5000万円以上の退職金を手にするとみられています」(司法ジャーナリスト)
検察の「裏金」を告発して懲戒免職された元大阪高検公安部長の三井環氏に退職金は払われなかった。正しいことをした検事は退職金ナシで、ムリ筋捜査で退職金アリとは許せない話ではないか。
(日刊ゲンダイ2011年8月5日掲載)