米国の経済ニュースは、米国債の格付け引き下げに占領された状態になっています。ご存知ですよね、先週大手格付け機関3つのうちの1つのS&Pが米国債をトリプルAからダブルAプラスに引き下げたことを。
 どう思われます? 当然、それとも、下げるべきではない?
 いずれにしても、3社のうち1社だけが引き下げをして、残りの2社はトリプルAを維持している訳なのです。こういうのを大人の対応というのでしょうか。
 何年か前にベストセラーになったアメリカの経済書が、日本の相撲の疑惑を取り上げていました。
7勝7敗の力士が千秋楽を迎えると、どういう訳か勝ち越す方が確率的に高いことが分かっているのだ、と。要するに八百長を示唆した訳です。でも、決定的な証拠はない訳です。
 今回の米国債の格付け引き下げ騒動は、そんなことを思い出させるものでもあるのです。
 取りあえず政府の方は不満の意を漏らしてみせるのです。何故、格下げする必要があったのか、と。
 しかし、今回どこも格下げを実施しなかったら、マーケットはどう思ったことでしょう? アメリカ政府がデフォルトを起こすかもしれないと、あれだけ世界を心配させて置きながら‥相変わらずトリプルAのまま?
 つまり、格付け機関が何も行動を起こさなかったら、格付けなんて‥と思われてしまう訳なのです。そうでなくても格付け機関の信用は相当落ちているとも思われるのに‥やっぱり政府とはそういう関係なのか、なんて。
 でも、かといって3社ともが一斉に格下げに走ったとしたらどうでしょう? 
 今回の1社の格下げでも様々な反応を与えているのに、恐らく大きなショックを与えたことでしょう。
 私の言いたいことがお分かりでしょうか? つまり、彼らは、何も言わず語らずお互いに理想的に行動しているということです。決して政府を追い詰めてはいけない、と。必ず逃げ道を作って上げておくべきだ、と。
 笑いたくなるのは、S&Pの計算ミスであるのです。ご存知ですか?
 今回、S&Pは米国債の格付けを引き下げた訳ですが、その根拠となる計算のなかに、2兆ドルのミスがあったのだとか。つまり、その分財政赤字が小さくなるのに‥そんなミスを犯した上で、米国債の格下げをしてしまったのだ、とか。
 当然のことながら、米財務省はS&Pに対して抗議をしている訳なのです。格下げを撤回すべきではないのか、と。
 でも、変ではありませんか?
 本当にS&Pは、チョンボをしたのでしょうか? それほど難しいとも思えない計算を間違うことがあるのでしょうか? もし、それが本当であったら、仕事を返上すべきではないでしょうか?
 どうも変なのです。敢えてS&Pは間違えたという疑惑も浮かんでくるのです。つまり、それによって政府に逃げ道を与えた、と。計算ミスがなければ格下げになることもなく‥、なんて。
 その一方でS&Pは、米国債を格下げして、格付け機関の存在意義を示したかった、と。だから、計算ミスを指摘されても、格下げを取り消すつもりなどない訳です。
 今回、米国は、最高のトリプルAから格下げされて大変ショックを受けているようですが、自分たちよりも遥かに格付けの低い中国から、大量のお金を融資してもらっていることに、むしろショックを受けるべきではないのでしょうか。
 どうも締らない格下げ騒動です。