永琳と本音
「へぇ……なかなかいい所に住んでいるのね。貴方が自分で作ったの?」
「ま、住居ぐらいこだわりたいからな。それにしてもなんで俺が作ったって分かったんだ?」
「見れば分かるわ。材木や繋ぎ目が貴方の霊力で強化されてるもの」
「…………」
今俺の目の前には永琳が座っている。
センスが良いんだか悪いんだか分からないような、左右で色が違う服を着て、髪はまるで宝石のように輝く銀髪。
本当に昔から全然変わっていない。
ちなみに今いる場所は俺の家の居間。
ちゃぶ台を挟んで向かい合うように座り、ちゃぶ台には湯気が立っている湯呑みが二つ置いてある。
限りなく静かだ。
今この家には俺と永琳以外誰もいない。
……正確には後一台いるが、あれは違う。
機械だし、今稼動してないし。
頭数には数えない。
「そういえば輝夜に地上で友達が出来たのよ? それも貴方も知っている子」
永琳がおもむろに話し始める。
……まぁ答えは絞られてくるな。
「妹紅か?」
俺は湯呑みを口に運びながら答える。
熱めだが、俺こんなんじゃ火傷しないので冷ます事なく口に入れる。
「ええ、輝夜も喜んでいたわ。気が合う友達が出来たって」
似た者同士だからよく喧嘩してるみたいだけどね、と付け加え、永琳も湯呑みを口に運ぶ。
「喧嘩する程仲がいいと言うがな。それにお互い不死だからいくらでも無理ができる」
少しくらい危険な遊びも殺し合いも好きなだけ出来る。
すぐにリザレクションできるし。
「…………」
永琳は俺の言葉を聞いて少し顔を曇らせる。
それは、何かを後悔しているような顔だった。
「……私達のせいなのよね。あの子があんな風になったのは…………」
永琳はぼそりと呟き、俯く。
確かに俺達が薬を置いて置かなければ妹紅が不死になったりしなかっただろう。
そして元をかえせば、俺達が不比等を守りきれなかったのが原因だ。
そして更に言えば、永琳が蓬莱の薬を創った事に始まる。
俺達は間接的とはいえ、少なからずあいつの人生を捩曲げている。
「……でも俺は気に病む事はないと思うぞ」
俺の言葉に反応して永琳は顔を上げる。
「確かに不老不死ってのは重りだ。実際俺がそうだしな」
俺の場合生きて来た年月の桁が違うが、本質は変わらない。
「でも嫌な事ばかりとは限らない。妹紅だって不老不死だからこそ輝夜と会えたんだし」
当たり前と言えばそれまでだが、人生は嫌な事だけでなく、良い事だって沢山ある。
人間は悲しい事に、嫌な思い出ばかり覚えている傾向が強いが、実際嬉しい事だって楽しい事だってある。
そうやって前向きに考えれば、不老不死もそんな嫌な事じゃないかもな。
自分以外の生物が全部死滅した状態で生き続けるとかは嫌だけど。

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