2011年6月8日 22時27分 更新:6月8日 23時6分
東日本大震災で被災した企業・個人が再建するために新たな借金を抱える「二重ローン問題」で、政府・民主党は8日、対策案をまとめた。企業向けは、新たに設立するファンドによる債権の買い取りや債務の株式化で震災前からの債務の返済負担を軽減することが柱。個人の住宅ローンは、金利引き下げや返済期間延長などを促す仕組みを導入する一方、一時検討された公的機関による借金の買い取りは見送った。【田所柳子】
与野党で来週以降に協議した上で、必要な予算措置を11年度第2次補正予算案に盛り込む方針だ。
中小企業向け支援策は、独立行政法人中小企業基盤整備機構や金融機関などの共同出資で「中小企業再生ファンド」を設置。再生可能と判断した企業に対して、債務の株式化や金融機関から債権を買い取るなどして、企業の返済負担を軽減する。新規出資による資金支援も行う。
再建の可能性を見極めるまで時間がかかる場合は1年程度、既存の借金の利子分を補給する仕組みを検討。利子補給の財源として、国などによる復興交付金(仮称)の創設を検討する。廃業に追い込まれる場合でも、個人事業者向けに、債務者と債権者が自主的に協議して負債を整理する「私的整理ガイドライン」の策定を検討。債務返済後に手元に残せる資金額を現行制度から引き上げるなど再建を促す措置を講じる。
比較的規模が大きい企業に対しては、日本航空の再建などを手掛ける企業再生支援機構を活用。支援機構の設置期間は14年秋までの5年間だが、延長を検討する。
個人向けでは、被災者の住宅ローンの金利引き下げや返済期間延長などの仕組みを新設。返済が困難な場合でも、債務免除に応じた金融機関の法人税を減額するなどして、私的整理による返済負担の軽減を促す。震災後、新たに住宅を取得する場合は、住宅金融支援機構による長期・低利融資で支援する。
金融庁などによると、金融機関の企業向け債権残高は、岩手、宮城、福島の被災3県沿岸部(39市町村)で、中小企業向けが1兆4300億円、大企業向けが1800億円、住宅ローン債権の残高は7560億円。当初は公的機関が個人や企業向けの債権を買い取る全面的な再建支援を求める声もあった。
しかし、公的ファンドによる債権買い取りなどを広く認めると、公的資金の損失や、金融機関の不良債権増加につながりかねない。阪神大震災など過去の支援策との整合性や、借金を抱えていない被災者との公平性にも配慮し、ファンドの支援対象は再生可能性のある企業に限り、それ以外は私的整理の枠組みを活用することになった。企業向けは、再建可能かどうかで支援策が異なるが、その判断は難しく、金融機関頼みの対策も多い。対策が不十分だと、被災地の経済停滞が長期化する懸念もある。