ＪＲ不採用訴訟：元国鉄の「採用差別」確定　最高裁

　８７年の国鉄分割・民営化に伴う国労組合員ら１０４７人のＪＲ不採用問題で、組合員３人が旧国鉄清算事業団の業務を継承した独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」に雇用関係確認と慰謝料支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第３小法廷（那須弘平裁判長）は７日付で、組合員、機構双方の上告を棄却する決定を出した。所属労組を理由とする旧国鉄の採用差別を認め、１人５５０万円の支払いを命じた２審判決（０９年３月）が確定した。

　約２４年に及ぶ不採用問題を巡っては昨年４月、当時の与党３党（民主、社民、国民新）と公明党が２審判決などを基に▽機構が和解金など１人平均約２２００万円を支払う▽政府はＪＲ各社などへの再雇用について努力する－－などを盛り込んだ政治解決案を提示。全原告９１０人（世帯）のうち９０４人が受け入れた後、同６月に機構相手の全訴訟を取り下げ、最高裁での一括和解が成立した。今回の決定は和解を拒否した組合員が対象になった。

　ＪＲ発足前、社員採用は国鉄側が提出した「採用候補者名簿」を基にＪＲの設立委員が決めたが、国労を中心に分割・民営化に反対した組合員の多くが記載されなかったとされる。１、２審を通じ、機構側は「記載に差別はなかった」と主張したが、２審の東京高裁は「国労以外の組合員の採用率と顕著な差があり、国鉄は国労に対し嫌悪感ないし弱体化の意図を持っていた」として慰謝料支払いを命じた。解雇無効の訴えは退けられたため、組合員側も上告していた。【坂本高志】

　【ことば】ＪＲ不採用問題

　国鉄分割・民営化で北海道、九州の国労組合員を中心に約７６００人がＪＲに不採用となった。中央労働委員会は最終的に国鉄清算事業団にも解雇された１０４７人の大半について選考見直しや採用を命じたが、ＪＲ側は行政訴訟を起こし、０３年に最高裁で「ＪＲに法的責任はない」との判決が確定。その後、旧国鉄を相手に訴訟が相次いだが、大半の組合員は昨年６月、政治解決を経た和解に応じた。