4日午前に放送された東海テレビ放送(名古屋市)の愛知、岐阜、三重3県向けの情報番組「ぴーかんテレビ」で、不適切な表記のリハーサル用テロップが誤って放送され、司会者が同番組の中で謝罪するトラブルがあった。
テロップは、岩手県産米「ひとめぼれ」10キロが当たる視聴者プレゼントの当選者の名前などを発表するはずのものだったが、「怪しいお米 セシウムさん」「汚染されたお米 セシウムさん」などと書かれた表示が23秒間にわたって放送された。
同社総務部によると、放送されたのは、当選者が決定する前に作成したリハーサル用のテロップといい、「放送に使用しない仮のものとはいえ、大変不謹慎な表現を使用したことに問題があった」とした。また、「福島、岩手県の方々にご迷惑をおかけし、視聴者には大変不快な思いを抱かせてしまいました」と謝罪した。
さて、このニュースは割と話題になっていますので既に耳にした方も多いことかと思います。東海テレビ放送側は謝罪の姿勢を見せていますが、まぁ日頃からそういうことを考えているからこそ、こういう結果にもなるのでしょう。この頃は取り沙汰されることが少なくなった政治家の失言と同様、心にもないことを誤って口にしてしまったとかそういうものではなく、裏で思っている謂わば「真意」の如きものが漏れ出してしまったと見るべきです。普段は良識家ぶって被災地に同情する素振りを見せていても、その実は福島や岩手の住民や産品を汚れた存在とみなしている、影では「セシウムさん」などと読んで嘲笑していたわけです。これが東海テレビ放送だけに限ったことであればいいのですが。
JA全中など、東海テレビCMの提供中止 誤放送に抗議(朝日新聞)
東海テレビ(名古屋市)が岩手県産米のプレゼント当選者を「汚染されたお米 セシウムさん」などと誤って放送した問題で、全国の農協をたばねる全国農業協同組合中央会(JA全中)が、6日に東海テレビで放映される番組のCM提供を中止することがわかった。
中止の理由についてJA全中は「問題のテロップは安全安心なコメづくりに励むコメ農家を愚弄(ぐろう)する内容。抗議の意思を示した」と説明。7日以降の対応は「検討中」という。
当然のことながら、農協が怒っています。それはもう、当たり前ですよね。一方で意識してほしいのは、この農協もまた東海テレビにCMを提供するスポンサーだったことです。隆盛を極める陰謀論的世界観によれば、テレビ局はスポンサーの顔色を窺うばかりで本当のことを伝えないことになっていますが、現実はどれほどのものでしょう。まぁ、今回もまた本当のことを伝えていないとは言えますけれど、ともあれスポンサーを激怒させたわけです。放送しようとして放送したのではないのかも知れません。しかし、テレビ局が本当にスポンサーの意向を気にしながらの報道に終始しているのなら、もうちょっと日頃から慎み深い行動を取っていても良さそうなものです。「セシウムさん」にしても、原発事故の被害をことさらに大きく煽り立てたいという思惑があって、日頃からその機会を待ち侘びていたがゆえのことではないでしょうか。マスコミは原発マネーwに縛られているなんてことはなく、結局のところ視聴者や購読者を増やすことを最優先にしているように見えます。
コメの放射性物質検査方法が3日に発表されたこともあり、都内のコメ店では古米(10年産)の品薄状態が続いている。東京・目黒区のコメ店「スズノブ」では4日、古米を求め主婦らが列をつくった。6人の男性従業員は汗だくで倉庫から米袋(30キロ)を運び、精米や袋詰め作業に追われた。創業60年以上の同店3代目の西島豊造さん(50)は「古米を大量購入するお客さんが数日前から急増し、震災直後の『買いだめ』の時と同じような現象が起きています」と話した。
福島第1原発事故の影響で7月中旬、(牛のえさの)稲わらからセシウムが検出され、それ以降、古米の問い合わせや購入者が徐々に増え始めたという。この日も、「ブランドは何でも良いので古米はありますか?」「1人何キロまで購入出来ますか?」など200件以上の問い合わせがあり、インターネット販売は“全品完売”で、一時中止にした。
震災後、古米の卸問屋と小売店の取引価格は急騰した。西島さんは「(震災前に比べ)各ブランド米は3割から5割上昇しました」と嘆く。しかし、同店では大半の古米は震災前に購入しており、値上げはせずに販売しているという。「1年前の米で、品質が落ちるため値段は上げたくない。出来れば新米を食べてほしい」と呼び掛けた。30日には、高知産の新米「南国そだち」が40袋(1袋30キロ)入荷した。「風評被害なのか高知の新米ですら全く売れません。秋になったら新米はどうなってしまうのか。米の安全性をアピールするためにどうしたらよいのか分かりません」と困惑した表情を見せた。
今回は引用ばかり多くて恐縮ですが、何とも笑えないニュースが次々と出てくるのですから困ったものです。あたかもトイレットペーパーを買い占めるかの如き勢いで今度は古米の買い占めに走る人が続出しているとか。原発と原爆の区別も付かない人が多いなら稲わらと米の区別を付けられない人が多くても不思議はないのでしょうか。まぁ在庫処分の機会と思うほかありません。原発事故の影響を受けるはずもない高知の新米すら売れないと伝えられていますが、「政府の言うことは信用できない」とか「子供に安全なものを食べさせたい」とか言えば、もう何でもありなのでしょう。こうなったら発想の転換ということで、ヒステリーを起こしている人に古米だけではなく放射「能」対策グッズとかを高値で売りつけて、その収益を被災地に寄付するとか考えた方が良いのかも知れません。
しかしまぁ、これは純然たる風評被害でもあります。東海テレビの「セシウムさん」等々、実態を大きくかけ離れた形で脅威を煽る報道こそが、被災地を孤立させ被災地の産品の価値を貶めているのではないでしょうか。視聴者プレゼントだった岩手県産米「ひとめぼれ」は去年の秋に収穫されたものと推測されますが、原発事故後の収穫ならまだしも(だからといって事故の影響を無限に拡大解釈することが許されるわけではありません)、事故前の米にまで「汚れ」扱いを広げようとする人々こそ、事故を起こした原発以上に害をもたらしている存在と言えます。
ネット世代のレイシズムは、もしかしたら習慣から発展したものではないかと思えることがあります。つまり、最初からレイシズムに染まってはいたのではなく、外国人への偏見や憎悪の言葉が繰り返される内に、いつの間にかそれが「当たり前」のものとして擦り込まれるようになっていったところもあるように思えるわけです。たぶん最初は、ジョークとして笑いの対象であったものが、いつの間にかそういう言動が「普通」になり、いつの間にか自明の真理であるかのごとく脳裏に刻み込まれていったフシはないでしょうか。そして放射「能」汚染もまた、レイシズムと同様の過程を経て形成されつつあると感じます。たぶん、東海テレビの制作スタッフにとって「セシウムさん」は軽い冗談のつもりだったのでしょう(大いに悪質ではありますが)。ただ当初は冗談として笑っていたものでも、いつの間にかジョークと事実の壁が忘れられ、当たり前のこととしてさも真実であるかのごとく信じ込まれるようになっていくことは十二分に考えられます。本当に福島なり近隣県は汚染されているのだ、忌避しなければならないのだと、あたかもレイシストが信じる外国人の危険性と同じノリで、放射「能」の害が実態とはかけ離れたところで「体感」されるようになっていくわけです。そしてこの憎悪は、放射「能」を糾弾するように装いつつ、結局は福島などの被災周辺地域に襲いかかっていくのです。
だって反原発村は反原発マネーに支配されてるんだもーん。
放射能は絶対危険、超微量でも超危険なんだもーん。
結局、その手の人は自分の脳内で無限に肥大させた被害の方を信じ続けるものですから。