「マジでサッカーが好き」な“最高のサッカー小僧”、松田直樹に出会えた幸せ
投稿日時:2011年08月04日 22:33
耳を疑った。「松田直樹が練習中に倒れ、心肺停止の状態で松本市内の病院に搬送」の一報が届いたのは、8月2日のことだ。誰もが願った。「松田よ、戻ってこい」と。
個人的な話で恐縮だが、1977年3月14日生まれの松田は学年で言えば自分と同級生。人生に幕を下ろすには、34歳という年齢は、あまりにも早すぎるはずだ。
ファッション誌の編集をしていた前職時代、松田直樹の姿をグラビアページで見かけることも少なくなかった。ユニフォームを脱いだ姿でも、松田直樹はかっこよかった。ただ、今、改めて思う。松田はやはり、ユニフォーム姿が一番よく似合うと。
ピッチ上でユニフォームを身にまとう松田直樹は、ただただかっこよかった。ポジション柄もあるが、決して華麗なプレーで人の目を惹きつけるタイプではない。ただ、彼ほど分かりやすく気持ちの伝わるプレーを見せ続ける選手は、正直見たことがなかった。
松田直樹を突き動かしていたのは、サッカーへの愛情だ。昨年12月、16年を過ごした横浜F・マリノスでのラストマッチ後に彼が残した言葉が今も忘れられない。
[写真]=佐藤博之
降り注ぐ「ナオキ・コール」。後半39分、3人目の交代選手としてピッチに入場した時、松田直樹は「頭の中が真っ白」だったという。ルーキーイヤーの1995年、開幕スタメンに抜擢されてスタートしたマリノスでの日々は、2010年12月4日、日産スタジアムで幕を閉じた。
試合後、あらかじめ説明のあったとおりに木村和司監督と嘉悦朗社長の挨拶がスタートしてからも「ナオキ・コール」は鳴りやまず。賛否は分かれるところだろうが、「今回の件は、クラブ内部で私を含む関係者が悩みに悩んで、整理、下した結論であります。文字通り苦渋に満ちた決断でありました。決して一朝一夕で決めた事ではございません」という嘉悦社長の言葉の下りはサポーターの声にかき消された。その後、選手たちはスタジアムを1周し、サポーターへの挨拶を済ませてロッカールームへと引き上げる。そんな中、ゴール裏に再び姿を現した松田はマイクを手に最後の挨拶をスタートさせた。
「いや~、ちゃぶられました。いらないか」
「16年間、本当に生意気で、わがままな自分を応援してくれて、本当にありがとうございました。バカでずっと生きてきましたけど、みんなが応援してくれたから……。自分のマリノスの1試合1試合は気持ちを込めて戦ったと思うし、もちろん俺にキレた人もいると思うし、でも、みんなの声援が自分の力になりました」
「マリノスのサポーターはマジで、最高です。こんな時間でみんなに対しての気持ちは伝えられないんですけど、とにかく、みんなが最高としか言えないんで。あとは、本当に感謝の気持ちしかないです」
「ただ、俺、マジでサッカー好きなんですよ。マジで、もっとサッカーやりたいです」
「本当にサッカーって最高だし、まだサッカー知らない人もいると思うけど、俺みたいな存在っていうのもアピールしたいし、サッカーって最高なところを見せたいので、これからも続けさせてください」
「本当にありがとうございました」
後半39分に途中交代で“最後”のピッチに立ち、試合後は思わず涙を流した松田
日産スタジアムでのラストマッチから約一カ月後、松田は松本山雅の入団会見で次のように語っている。
「今日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。長野県松本市にある松本山雅というチームに入団させていただくことになった松田直樹と申します。会社、チーム、ファン、サポーターが一丸となって必ずJ2に上がりたいと思っています」
「(現役を続けようと思った理由は)サッカーが好き、それだけです。マリノスをクビになったときも、それしか浮かびませんでしたし、指導者になることも少しは考えましたが、サッカーをやりたい気持ちしか出てこなかった。それが大きいです」
「どんなチームが相手でも、負けたくない気持ちはいつも持っています。まずはJ2昇格が目標になるかもしれませんが、自分の中では、そのままJ1へ上がりたい気持ちもありますし、1試合1試合に懸ける思いはどんな試合でも変わりません」
「(長野県の子どもたちに伝えたいことは)サッカーの楽しさを表現したいと思っているので、自分の中では、毎試合、感動や夢を与えていくことができればと思います。子供たちには、親に言われたからとかではなく、『自分から好きになる』こと、その大切さを伝えたいです。それがサッカーでなくてもいいので、それだけは伝えていきたいですね」
松本山雅の入団会見からわずか7カ月後の悲報。そして、この悲しみの知らせから数時間後、松田の家族からファンに宛てた手紙が公表された。
「今回、このようなことになりましたが、松田直樹はよく頑張ったと思います。関係者各位、選手、サポーターの皆さまから温かい応援のメッセージをいただき、家族も直樹も勇気づけられました。ありがとうございました。直樹は横浜Fマリノスで16年間、その後、現在の松本山雅で8カ月になりますが、大切な仲間と大好きなサッカーをすることができました。本当に松田直樹は幸せでした。みなさま本当にありがとうございました」
本当に幸せなのは、松田直樹という“最高のサッカー小僧”に出会えた僕たちのほうではないだろうか。「マジでサッカーが好き」。常に本気でサッカーを愛し、いつも全力で走り続けた分だけ、今は安らかに眠ってほしいと思う。
松田直樹選手、本当にお疲れさまでした。
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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではグラビアページを担当。
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