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福島第1原発:賠償中間指針の問い合わせ相次ぐ

 文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が、東京電力福島第1原発事故に伴う損害賠償の範囲を示す中間指針を決定したことを受け、福島県災害対策本部には6日、指針に関する問い合わせが相次いだ。指針では対応が盛り込まれなかった自主避難者はもとより、対象に含まれても将来への不安を訴える声は多い。

 同本部が設置する損害賠償相談窓口には、午後7時までに31件の電話があり、「自主避難した場合の賠償は指針に含まれているのか」「警戒区域に車を置いてきたが補償されるのか」などの質問があったという。担当者は「県が求めている自主避難者への賠償などはまだ決まっておらず、早急に結論を出してほしい」と話す。

 局所的に放射線量が高い「ホットスポット」に当たるとして426世帯のうち86世帯が特定避難勧奨地点に指定された伊達市霊山町小国地区。指定世帯が避難すれば賠償されるが、非指定世帯が自主避難しても現時点では賠償対象にならない。

 指定されなかった自営業の女性(42)は、小学5年の次男が放射性物質の影響を不安がり、夫の両親を残して実家に自主避難した。「補償がなければ二重生活は苦しい。自宅に戻るために夫は庭をコンクリートで埋めようと言うが、それもお金がかかる」とこぼす。

 福島第1原発から約100キロ離れた会津若松市の郷土料理旅館「渋川問屋」は、震災以降、予約の食事客や宿泊客計3000人以上からキャンセルが相次ぎ、損害は約1000万円に上るという。先月末から客足は戻りつつあるが、まだ例年の3割にも満たない。

 経営者の渋川恵男(ともお)さん(64)は、賠償対象とされても、「事故の影響があと何十年も続いたらどうなるのか。収束までの被害をすべて賠償してほしい」と訴える。

 同原発から350キロ以上離れた静岡県産の茶も賠償対象に含まれたが、同県島田市で有機栽培茶を製造・販売する杉本芳樹さん(58)は「風評被害分をどう算定してくれるのか」と不安を口にする。

 独自に検査機関に出して安全性を証明したが、新茶はほとんど売れず、一部は摘み取りさえしていない。昨年の在庫で売り上げをまかなっているが、「来年の新茶ができるまでに在庫がなくなるかもしれず、ぎりぎりだ」と窮状を訴える。【蓬田正志、高島博之、石山絵歩】

毎日新聞 2011年8月6日 21時06分

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