ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。


トコトン議論〜日本のエネルギー政策を考える〜

東京新聞に見るジャーナリズムのあるべき姿

Life is beautiful

中島聡 プロフィール

今回の原発事故に関して、政府や東電からの発表が信用できないだけでなく、テレビ・新聞などの大手マスメディアの記事にもかなりバイアスがかかっていることが明らかになって来た。特に読売と産経の「経産省より、経団連より」のバイアスは目にあまるものがある。

こんな状況だから、今回の事故ではブログやYoutubeなどのパーソナル・メディアが情報源として多いに役に立ったと感じている人も多いとは思うが、これはこれであいかわらず玉石混淆であり、その中から信頼できる情報や意見を選び出すことは簡単ではない。

先日も、「福島第一原発の敷地。敷地内の土地のあちらこちらにヒビ割れが生じていて、そこから高温のどす黒い湯気が噴き出しているそうです。」というデマが流れていたが、パーソナル・メディアのみに頼るとこの手のデマに惑わされる危険があるのが難点である。

となるとやはり一時情報として頼りたくなるのはマスメディアだが、その中で私がもっとも信頼しているのが東京新聞。バイアスのかかっていない質の高い記事を書いているからだ。例えば、今回の経産省のトップ3人の更迭の件。8月4日から5日にかけて、2つの記事と1つの社説が書かれているので順番に紹介する。

原発3首脳更迭 問われる政治の責任(8月4日夕刊)

「松永氏は二〇一〇年七月に就任。わずか一年での交代は、よくある、不祥事の責任を取らせるための更迭にみせかけた定期異動ではなく、明らかな更迭であり、重い処分だ。」とこの更迭をきちんと評価した上で、「更迭によって官僚側だけを処分し、首相が辞めないのであれば、国民には今回の更迭が『トカゲのしっぽ』切りにしか映らないだろう。」と首相の責任もきちんと追求している。

経産3首脳更迭 与野党 退陣圧力に利用(8月5日朝刊)

冒頭の「海江田万里経済産業相が同省の松永和夫事務次官ら幹部三人を更迭する方針を表明したことを受けて、与野党から四日、『辞めるべきは菅直人首相だ』との声が相次いだ。依然退陣時期を明示しない首相を早く辞めさせようと、今回の更迭問題を辞任圧力に利用している格好だ。」が主旨だが、記者自身はあくまで第三者の立場から、政局を語っている点が高く評価できる。

経産首脳人事 これでは改革が進まぬ(8月5日 社説)

ここでは「海江田万里経済産業相が松永和夫事務次官を更迭し、後任に安達健祐経済産業政策局長を起用した。これでは旧来路線の踏襲が明らかだ。菅直人政権は原発・エネルギー政策を見直せるのか。」と後任人事が旧来路線の踏襲になってしまっていることを批判している。そして、「ところが、海江田経産相は省内の筆頭局長である安達氏の次官昇格を決めた。まさに年功序列の順送り人事である。本来なら、改革派官僚を抜てきするくらいの覚悟で臨むべきだったのに結局、省内秩序を優先してしまった。政官業が一体となって『原子力村』を構成している原発・エネルギー分野は既得権益の塊でもある。利権構造を打ち破るには相当な力業がいる。にもかかわらず、過去の政策立案に深くかかわってきた局長の昇格をすんなり認めるようでは、政策の見直しが進むとは到底思えない。」と的確な指摘をしている。

「原子力村 vs. 菅内閣」「菅おろしをしたくて仕方がない与野党」という構図の中で、どちらの側にも立たずに、きちんと事実関係を捉えて記事・社説を書いている東京新聞こそジャーナリズムのあるべき姿だ。

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