危険手当までもピンハネされているのでは
福島原発事故が発生してからは、事故収束のために賃金のほかに危険手当が支給されるようになりましたが、3〜4月は1日の危険手当が10万円弱でしたが、5月以降は危険手当が1万円程度の人と、5百円〜千円程度の人、まったくもらえない人もいるなど、「危険手当までもピンハネされているのではないか」と語る労働者もいるほどで、原発ジプシーと呼ばれる他県の原発から来た労働者なども危険手当が出ないので帰ってしまう人も出ています。事故発生で放射線量が高く危険が多いのに危険手当も満足に出ないのでは福島原発で働こうという労働者が不足するのは当然ではないでしょうか。この労働者不足にもつけこんで暴力団など反社会的団体の跋扈を許すことにもなっています。そして技術者も不足し、素人が作業をせざるをえない状況も生まれているのです。
東電による徹底した労働者の口封じ 「マスコミに話したら仕事やめてもらう」
現場の仕事によって被曝線量が多い所と少ない所があるので、それを考慮して仕事を変更しながら進めたりする必要があるのに、仕事が固定化されています。そうした問題があるのに、原発下請労働者は「何があっても訴えません」という念書を書かされた上で働かされています。また、徹底した箝口令が布かれています。東電は原発下請労働者に対して、「マスコミに匿名で話をしたら、誰が話したか分かり、仕事をやめてもらうことになるぞ」という脅しをかけることで徹底した労働者の口封じをはかっているのです。
複雑な重層的下請構造は 暴力団など反社会的団体の介入許す温床
また、複雑な重層的下請構造は、暴力団など反社会的団体の介入を許す温床にもなっています。福島原発事故前にも、ヤミ金で返済不能になった人や多重債務者などを原発労働者として無理矢理に働かせることなどがありましたが、事故後はさらに暴力団の介入が激しくなっています。作業現場では私物が盗まれるなどの問題が多くなり、まじめな労働者が安心して働けない状況にもなっています。「働く人数が少なくなってもいいから暴力団関係者がいない方が作業が進む」と私に訴える労働者もいるほどです。
原子炉・使用済み核燃料プールで 潜水作業させられる外国人労働者
それから、原発における労働者使い捨ての象徴とも言える外国人労働者の問題があります。外国人労働者は、原発の定期検査のとき、水が入った原子炉や使用済み核燃料プールに潜水して修繕箇所の事前チェックをさせられているのです。私は実際に福島原発で働かされていた外国人労働者のプール潜水作業を手伝っていたという日本人原発労働者から直接話を聞きました。プールの中は水が青く光っているなどして外からだけではなかなか修繕箇所などが見づらく、人間が実際にプールにもぐって事前チェックをする必要があるそうです。この危険な潜水作業を外国人労働者にやらせていて、潜水作業後は、放射性物質を体外に出すという目的で利尿作用のあるビールを飲ませるそうです。外部の人間が原発構内を視察する場合などには、外国人労働者は目につかないようにしているそうです。あくまで噂話ですが、原発労働者の間では、そうした外国人労働者は囚人が連れてこられているのではないかとまことしやかにささやかれているそうです。外国人労働者が原発でこうした使われ方をしていることは、私自身、多くの原発労働者から実際に聞いていますので、日本の多くの原発で現在も日常的におこなわれていることだと推測しています。
国際的にも最悪で深刻な福島原発事故のもとで原発労働者のこうした重層的下請構造と無権利状態、使い捨て労働に拍車がかかっています。過酷な状況のなかで被曝しながら働いても、原発下請労働者には何の補償もない現状を即刻あらため、中間搾取をやめさせ、相応の手当を払うなど労働条件の向上が必要です。
福島第1原発を廃炉にする作業は今後数十年かかると言われています。技術者を全国から集めるためにも、東電は相応の緊急災害手当を支給するとともに、末端の労働者にも届いていることをすぐに確認すべきです。(福島県いわき市・日本共産党市議会議員・渡辺博之氏)