7月30日の土曜日、夏休み中の休日とあって神戸市の須磨海岸には、3万5,000人の海水浴客が訪れました。
須磨海岸といえば「VOICE」ではこれまでも…
夜中じゅう響き渡る花火の問題や…
近隣住民を悩ませる音楽イベントの騒音問題。
<近所の住民・女性>
「汚いですよね、ほんとにもう」
<近所の住民・男性>
「腹立つから(ゴミを)集めてるけどね」
砂浜を覆い尽くさんばかりの大量のゴミ。
度々、憤懣取材班が出動してきました。
では、今年はどうなのか。
神戸市の職員や警察OBで結成された砂浜パトロール隊に同行しました。
まずはじめに隊員が注意したのは…
<隊員>
「こんにちは、今年から条例で(タバコは)灰皿のあるところでおねがいします」
「(須磨)海岸がタバコ禁煙になってるんですよ」
須磨海岸では、今年から指定された場所以外での喫煙が禁止されました。
罰則はありませんが、みな、すんなりと職員の指導に従います。
「ついに須磨の海に平穏が訪れたのか?」
取材班が胸をなでおろしたのも束の間、ビーチには新たな問題がわき起こっていました。
それは…

そう、入れ墨!
神戸市が今年4月に制定した条例で、「入れ墨を露出するなどして他人に恐怖心をあたえること」を禁止したのです。
<隊員>
「お兄さーん、こんにちわ。お兄さんお願いしますね、入れ墨を」
<男性海水浴客>
「OKOK、これ着るから」
近頃はファッション感覚で、シールを貼ったり小さいものを彫ることも多い、入れ墨。
条例に対する若者の感想を聞いてみるとー
<男性海水浴客>
「個性ちゃうかな。職業柄全身に入ってる人もおるやろし。区別が厳しいわね、怖いと思う人と大丈夫やと思ってる人との」
<男性海水浴客>
「周りから見たらこわいかもしれんけど、こっちはファッションでやってるから。いまから時代によって変わっていくかなと」

当事者からは不満の声が聞かれますが、さらに条例を作った神戸市を訴えようという人まで現れたのです。
<須磨海浜公園売店協同組合 山田博補理事長>
「『おいタトゥーかくせ、シャツ着ろ』というのはすごく乱暴で全然愛情がない」
神戸市で制定された、入れ墨の露出を規制する条例。
これを「人権侵害」だとして訴えようとしているのは、海の家でした。
<須磨海浜公園売店協同組合 山田博補理事長>
「(入れ墨のある人が)特殊な人物だとらく印を押してしまってる。神戸市がそういうふうにチームつくって『タトゥー隠せ』とか『Tシャツ着ろ』とかしてしまったもんやから、タトゥーいれてた人間のみならず、入れてないグループも同じグループとして須磨から消えてしまった」
山田さんが怒っているのは、神戸市が相次いで条例で規制強化を図ったからでした。
神戸市は2008年「須磨海岸を守り育てる条例」を制定。
打ち上げ花火の禁止と、騒音規制を打ち出しました。
海の家に対しても・・・
<海の家 店長>
「これがアンプです」
<記者>
「貸し出してるのは?」
<海の家 店長>
「神戸市さんです。モノラルでしか音が出ないので音楽かけるには適してないアンプ」
<記者>
「それはどういうことが気にされてる?」
<海の家 店長>
「音響、音の大きさだと思うが、それは各店守っているが、それにもかかわらず、こういうのを強制的につきあわされているのが現状」
市が音楽の大きさを規制するためアンプやスピーカーを強制的に貸し出し、閉店時間を8時に1時間繰り上げたのです。
さらに今年からタバコと刺青の禁止で、海の家の売り上げは去年より3〜4割減ったといいます。
<別の海の家 店長>
「『須磨行ってもことしは楽しくないよ』っていう声は聞かれるので、お客さんの数は減ってると思う」
なぜ、神戸市はそこまで厳しく規制を重ねるのでしょうか。
<神戸市の担当者>
「昨年、あってはならない事件、薬物の乱用事件があって逮捕者が出たということで」
去年、海の家の音楽イベントに来た若者11人が、麻薬を使用していたとして逮捕されたことでイメージの悪化が一気に進行。

かつて年間139万人あった人出は、去年は62万人と過去25年で最低に落ち込みました。
それに対して、去年、来場者数が15パーセントも増えたビーチがありました。
須磨海岸からおよそ9キロ離れた垂水区の海水浴場「アジュール舞子」。
取材に行ってみると、来場者のほとんどが家族連れでした。
<女性海水浴客>
「雰囲気めっちゃいい。ちっちゃい子多いし」
<女性海水浴客>
「須磨にはいかない。(去年)薬物の事件があったから。今年はその影響でこっち(舞子)に増えている」
「アジュール舞子」には、入れ墨を規制する条例もタバコを禁止する条例もありません。
一方今年の須磨海岸、警備員や警察官を頻繁に見かけます。
取材中にも…
<ライフセーバー>
「正面にいる黒い服の男性が… 水着の女の子いたらそこに向けてカメラでとってる」
<警備員>
「カメラ持ってた?」
<男>
「持っていない」
<警備員>
「カメラ持ってるんちゃうん?」
<男>
「はい」
<警備員>
「お兄さんが撮ったって苦情がきてるからな」
<男>
「(私)外国人」
<警備員>
「外国人も日本人も関係ないから」

盗撮の疑いで現場は一時騒然、男性は事情聴取のため警察に連行されました。
7月29日の土曜日だけで、警察が出動した件数は4件にのぼりました。
さらに…
<記者>
「いま救急車が到着しました。担架で誰かを運ぶようです」
救急隊が向かった先には、目を半開きにしたまま動かない男性。
聴診器で脈をはかります。
4時間、同じ姿勢でいるのを不審に思った警備員が通報しました。
<記者>
「今、呼吸とか反応があるんですか?」
<救急隊員>
「大丈夫です」
(Q.命に別状は?)
「はい、まぶた動かしてますんで」
男性は急性アルコール中毒の疑いと診断され、救急車で病院に搬送されました。

これでは、小さな子どものいる家族連れが離れてしまうのも無理はありません。
午前5時すぎの海岸には前日の喧噪の名残か、あちこちにごみがちらばっていました。
<近所の男性>
「もうすぐしたら(清掃の)トラック来るはずや、シートだけアカンねん、まきこんでまうから」
<記者>
「おとうさん、毎年やられているんですか?」
<近所の男性>
「ずうっと気が向いたらどけてる。去年は麻薬事件があったから、今年は健全な海になってほしいとみんな願っている」
モラルを守らないと、規制が増えるのは致し方ありません。
須磨海岸を将来どんな海岸にしたいのか、行政に近隣住民、来場者が一緒になって考えていく必要がありそうです。
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