広島で被爆した少年がたくましく生きる姿を描いた、漫画「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さん(72)=埼玉県所沢市=が初めて、平和記念式に出席した。首相が何を語るか注目したが、「脱原発にも核兵器廃絶にも、もっと踏み込んでほしかった」。
広島の爆心地から1.2キロで被爆。父と姉、弟を原爆に奪われた。「宣言で平和が来るのか」と記念式には足が向かなかった。しかし、昨年秋に肺がんの手術をし、死線をさまよった。「見納めになるかもしれない。首相が核兵器廃絶の決意をどんな言葉で語るか、見届けたい」と決めた。
福島で原発事故が起き、「放射能の恐怖を知った広島、長崎の教訓が生かされていない」と憤る。7月、がんの転移が見つかり、今月下旬から抗がん剤の治療に入る。中学生と小学生の孫、次の世代のためにも「人が制御できない原発はなくすべきだ」と語った。(金順姫)