ウミガメ産卵地に髪３３キロ捨てる「パトロール隊が処分してくれる」

　中部地方有数のアカウミガメの産卵地に“毛ったいな”ゴミが大量投棄されていた。愛知県警豊橋署は５日、美容室で切った髪の毛約３３キロを海岸に捨てたとして、廃棄物処理法違反（不法投棄）の疑いで、同県豊橋市の美容室と女性従業員（２０）を書類送検した。女性従業員は調べに「海岸のパトロール隊が処分してくれると思い、軽い気持ちでやった」などと容疑を認めている。

　アカウミガメの産卵地が“頭髪ゴミ”で荒らされた。豊橋署によると、美容室従業員の書類送検容疑は、５月１８日午後１１時頃、事業廃棄物である髪の毛約３３キロを同市小島町の表浜海岸に捨てた疑い。美容室は、処分を指示した疑い。女性従業員は当日の勤務後、髪の毛を詰め込んだビニールのゴミ袋１０袋以上を車に乗せ、海岸のそばまで運搬。車を降り、そこからゴミ袋を砂浜に向かって次々と放り投げ、そのまま帰宅した。同日中に付近の住民が発見し、翌１９日、警察に通報があった。

　捨てられたビニール袋は透明で、いくつかは破れて髪の毛が外に散乱した状態だった。同署が中身を調べたところ、無造作に入れられた茶色や黒の頭髪のほか、店名が入った紙片も発見し、この美容室を突き止めた。

　表浜海岸はサーフィンをする若者が訪れるだけでなく、アカウミガメの産卵地としても有名なスポット。今年は５月２８日の初上陸から８月４日までに、延べ８５匹が上陸し、４４件の産卵が確認された。砂浜では毎日、同市や環境保護団体、ボランティアが清掃を行っている。女性従業員は通勤で付近の道路を何度も走っており「海岸のパトロール隊が処理してくれると思い、軽い気持ちでやった」と供述している。

　美容室から出た頭髪は本来、事業廃棄物として、美容室側が処理専門業者に金を払い引き取ってもらうことになっているが、女性従業員は「朝、ゴミの指定場所に捨てるのが面倒だった」とも供述。処理代をケチったわけではないものの、美容室がこの従業員にきちんと指導していなかったことも明らかになっている。

　豊橋署は「けしからん。こんなことをされたらゴミ行政がグチャグチャになる」と怒り心頭。同市環境保全課も「アカウミガメは音や光が苦手だが、ゴミも好まない」と説明。投棄された頭髪は幸いにも初上陸の直前に排除されたが、産卵時期は例年８月下旬までとあって、同課では「ゴミは置いていかないで」と呼び掛けている。