(cache) 仔犬のつづり

Vol.1 しつけ以前に大切なこと

既に愛犬と暮らしている飼い主さんはこんな思いをしたことがありませんか?

・散歩中は愛犬にグイグイ引っ張られてどちらが飼い主なのか分からない
・無駄吠えが多くてほとんど制止が利かない
・ワガママな性格でほとんど命令に従ってくれない(言うことを聞いてくれない)
・シャンプーや爪切りはひとりでは無理
・家族に対してさえも反抗的な態度を見せる
・しつけはもうほとんど諦めてしまっている

もしすべての項目が「自分とは無関係」であればとりあえずはセーフ(合格点)です。

油断は禁物ですがこの調子で愛犬との生活を楽しんでいきましょう。

もし1つだけ該当する項目があった飼い主さんは今のところ問題ないかもしれませんが、場合によってはそのうち大変なことになる恐れがありますので要注意です。

また、2つ以上該当する項目があった飼い主さんは既に愛犬のペースにすっかり巻き込まれてしまっています。(このままだと手遅れになるかもしれませんよ…)

ペットブームが訪れる前(昭和の年代)に犬を飼育されていた方は思い出してみてください。

恐らく当時はこういった苦労をされた飼い主さんの方が少なかったはずです。

もちろん犬が進化して性質が変わってきたなどということはありません。

それでは一体何が変わってきたのでしょう?

答えはただひとつ、我々人間(飼い主)の犬(ペット)に対する意識の変化です。

ひと昔前までは、犬は外の犬小屋で飼うもので家の中には入れないという考え方がほとんどでした。

そして世の中はペットブームを迎え、かつては飼い犬の使命とされていた番犬としての役割が減少し、今では家族の一員として室内でペットを飼育するケースが定着してきました。

もちろん、我が子同然の子犬ですので家族の一員として接してあげることは決して間違いではありませんが、溺愛して何でも思い通りにさせてあげることと、愛情を持って接することはまったく意味合いが違います。

こういった飼い主のペットに対する意識の変化がわがまま放題で手に負えない子を増やしてしまう一番の原因なのです。

それでは純粋で素直な人懐っこい子犬が一体何をキッカケにわがままな性格の子に豹変してしまうのでしょう…?

そもそも犬という動物は本来群れを成し、その群れの中にはひとりのボスが存在します。

群れのメンバーである犬たちはボス犬には絶対服従で、ボス犬は群れのメンバーを守り抜くという使命を背負いながら共存していくのが本来の姿です。(当然、野生の犬社会ではこの主従関係がしっかりと築かれています)

その反面、人間のペットとして迎えられる子犬の多くはその愛くるしさと物珍しさから飼い主さんにチヤホヤされながら(お姫様状態で)育ってしまう場合が多いので、ほとんどの子は自分が群れのメンバー(家族の中で最下位)ではなく、群れのボス(家族の中で最上位)であると勘違いしてしまうのです。

そう言われると「子犬には最初からかなり厳しく接しないとダメなのかな…」と不安に感じてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。

ハッキリ言ってこれから伝授するポイントさえ押さえていれば飼育初心者だってカンタンです。

恐らくしつけに対する考え方が変わって愛犬との暮らしが良い方向へ向かっていくことでしょう。

犬と飼い主の主従関係は子犬を迎えてから(一緒に暮らし始めてから)最初の1ヶ月間でほぼ決まるといっても過言ではありません。

これは子犬、成犬を問わず同じです。

普段はわがまま放題の成犬でも訓練士さん(トレーナー)の前ではおとなしくて聞き分けの良い子に変身してしまうのは、最初の印象で上下関係がビシッと決まったからなのです。

つまり最初の1ヶ月間を今までの生活スタイルを崩さずごく当たり前に(溺愛などせずに)過ごすだけで、子犬はあなたをリーダー(群れのボス)として認めてくれます。

もう一度言います、最初の1ヵ月間だけでいいのです。

実際に子犬を目の前にすると、見た目から仕草までホントにびっくりするくらい可愛らしいです。(写真やテレビの映像なんて比になりません)

なのでついつい誘惑に負けて甘やかしてしまいそうになりますが、そこはグッとこらえましょう。

家族の一員として愛犬に接することは大いに結構ですが、あくまでも「人間と犬」という一定の距離感を保つことを忘れてはいけません。

ご家族皆さんがこういった気持ちを持って子犬を迎え入れさえすれば、これから10数年間続く愛犬との生活が数十倍も楽しいものになるのです。

Vol.2 しつけを始める前に

日常生活において最低限必要なしつけ(トイレトレーニング・やっていいことといけないことの区別)は子犬を迎えてすぐに始めても構いませんが、それ以前にまず子犬にご家族みなさんのことを自分よりも上位(偉い)と認識させることが何よりも大切です。

多くの飼育マニュアル本の類ではこの本来あるべき主従関係を築くことよりも、具体的なしつけ方に重点を置いて説明していますが、まず最初は子犬が家族の中で最下位であると理解させることだけに重点を置いてみましょう。

ここが子犬のしつけにおける最大のポイントなのです。

こういった主従関係がきちんと築かれていないとしつけどころではなくなり、本来楽しいはずの犬との生活が、「こんなはずではなかったのに…」というただ大変なだけの生活になり得るのです。

生後2ヵ月齢程度の子犬がこの主従関係を理解するまでに要する期間はおおよそ1ヶ月間とお考えください。

さらに月齢が経っている子であれば、もっと早い時期に自分の立場(家庭内での順位)を決めてしまうこともありますのでご注意ください。

「フセ」や「マテ」といった訓練的な要素を含んだしつけはもっともっとあとで大丈夫です。

Vol.3 本来あるべき主従関係の構築

子犬は新しい家に来ると、飼い主さんの行動や生活パターンを観察しながら自分の置かれた立場を徐々に認識していきます。

ここでご家族のみなさんがもの珍しさから子犬を溺愛(特別扱い)してしまうと、子犬は自分が特別な立場であると認識してしまう場合があります。

日本の多くの飼い主さんがこのパターンで、犬と対等な関係(友達関係)になってしまう場合が多いようです。

場合によっては犬の方がリーダーと化してしまうケースも珍しくありません。

こうならない為にもすべては子犬を迎え入れてから最初の1ヶ月間が勝負ということを忘れないでください。

ここで子犬にナメられて(馬鹿にされて)しまうと、その関係が10数年間続いてしまうのです。

こうなってからではいくら訓練士さんなどに矯正を依頼したとしても、飼い主さんと犬との主従関係が変わることはまずありませんので、結局のところ大きな効果はほとんど期待できないのです。

カワイイ子犬を目の前にするとついつい甘やかしたくなる気持ちは解りますが、ここでグッとこらえて我慢してください。

何度も言いますが、たったの1ヶ月間だけでいいのです。

1ヵ月間、スパルタ教育をしろと言っているのではありません。

最初の1ヶ月間をケジメのあるごく当たり前の生活さえ送ってさえ頂ければ、子犬はご家族みなさんのことを自分より立場が上位であると認識してくれるのです。

『ケジメのあるごく当たり前の生活』とは子犬を迎え入れたからと言って今までの生活パターンを子犬中心の生活に変えてしまわないこと。

子犬を構ってあげていない時(ハウスの中に入っている時)は『そこに子犬はいない』と思って過ごすくらいでいいでしょう。

飼い始めて間もない子犬がハウスで休んでいるにも関わらず外側から声を掛けるなどして構ったり、子犬をハウスから出しっ放しにしてひとりで自由な状態で遊ばせたりする飼い主さんが多くいらっしゃいますが、こういった間違った接し方ひとつひとつの積み重ねがしつけの失敗に繋がっていくのです。

子犬がハウスで休んでいる時は放っておき(=子犬に自分ひとりで過ごす安らぎの時間を与える)、子犬と遊んであげる時はダラダラと長い時間遊ぶのではなく、必ず飼い主さんが一緒になって短い時間で楽しく遊ぶ(=飼い主さんと中身の濃い遊びをすることにより飼い主さんのリーダーとしての魅力が増す)といったケジメのある生活を心掛けてください。

それさえ出来ればこの先10数年間続く犬との生活が非常に楽しいものとなり、なおかつしつけの面で大変な思いをすることなどほとんどなくなるのです。

しかしながら、これとは逆で「近年は犬の飼育スタイルが昔のそれとは変わりつつあることから、しつけに主従関係など必要ない」といった意見もちらほら聞くようになりました。

確かに“家族の一員として大切に飼育されるペット”と“ボス犬をトップとした群れの中で過ごす野生の犬”とでは生活環境が大きく異なりますので、すべてのしつけを主従関係だけで解決出来るとは限りませんし、“何が何でも絶対服従”といった強引な主従関係はペットのしつけには不向きかもしれません。

では、本当に主従関係は必要ないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。

考えてみてください。

犬の訓練士さん(トレーナーさん)はなぜ飼い主さんが手に負えない凶暴なワンちゃんでも上手くコントロール出来るのでしょうか?

それは彼らが実践的なトレーニングに入る前段階で(一番最初に)“訓練士=上位”で“犬=下位”という上下関係をワンちゃんに理解させているから出来ることなのです。

そうです、これが“主従関係の構築”です。

主従関係を築いた後のトレーニング方法に関しては訓練士さんによってさまざまなやり方がありますが、実践的なトレーニングに入る前段階で欠かすことが出来ない最も重要なポイント(=しつけの基本中の基本)は“主従関係の構築”以外の何モノでもありません。

当然、訓練士さんは“プロの技”を使いますのであっという間に主従関係を築くことが出来ますが、みなさんはペットとして子犬を迎えたのですからそこは無理をせずに普段の生活を通じながら徐々に理解させていくことがより自然で優しい方法です。

現代の犬たちにも祖先であるオオカミの習性はまだまだ残っています。

主従関係の構築はしつけの土台作りを行う上では欠かすことが出来ませんので、強固な土台(=絆)を完成させた上で飼い主さんそれぞれのライフスタイルに合ったしつけに移行していくことが望ましいと言えるでしょう。
プロフィール

Author:ニンジー
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