(cache) 仔犬のつづり

Vol.4 しつけのコツ

前項にて解説しました本来あるべき主従関係の構築が完了すれば実践的なしつけに移行出来るのですが、ここであれもこれもと欲張って教えてはいけません。

もちろんこの段階でも「マテ」、「スワレ」、「フセ」といったことを教えてあげれば意外とカンタンにマスターしてしまうのですが、子犬の能力に応じて最低限必要なことから順番に教えてあげるのが効率的で無理のない方法です。

犬の知能は成犬で人間の3~4才児程度と言われています。

当然ながら幼い子犬の知能はそれよりも劣りますので、一度にたくさんのことを教えようとすると混乱してしまい、それが原因でトレーニング嫌いな子(=しつけを受け入れない子)にしてしまう恐れがあるのです。(人間で例えると“勉強嫌いな子”になってしまうということですね…)

ですので、まずは『やって良いこととイケナイことの区別を理解させる』というところからトレーニングしていきましょう。

これを子犬にも解り易く理解させる方法として最も手っ取り早いのは良いことをした時には思いっきり誉めてあげることです。

誉める時は幼い子犬でもより解り易いように大げさに誉めてあげましょう。

動物王国のムツゴロウさん(畑正憲氏)が動物に接する姿をご覧になったことがある方は解ると思いますが、これが“大げさな誉め方”の良い例です。

そして、やってはイケナイことをした時には「イケナイ!」と言い聞かせること。

ここでのポイントは「ダメでしょ~」、「こら、イケナイって言ったでしょ」、「○○しちゃダメよ!」といったさまざまな表現を使うのではなく、ご家族みなさんで「イケナイ!」に統一しておくこと。

ご家族皆さんでいろいろな表現を使ってしまうと幼い子犬にはその違いが理解出来ずに混乱してしまいますが、「イケナイ!」のように簡潔で犬にとって聞き取り易い音感の言葉を使うことは犬のしつけにおいてとっても効果的なのです。(この段階ではまだ教える必要はありませんが、「ハウス」、「マテ」、「スワレ」、「フセ」といった指示も簡潔で聞き取り易い音感のため広く使われています)

だからと言って、「子犬が何か悪さをしたらすぐにイケナイ!と言い聞かせればいいんだな…」と目を光らせているだけではいけません。

ここで飼い主さんが配慮すべき点は、子犬に失敗をさせないように(叱る必要がないように)工夫してあげること。

例えば子犬を遊ばせるお部屋の床に観葉植物が置いてあれば、好奇心旺盛な子犬にとって恰好のおもちゃになるのは目に見えていますので、子犬の興味をそそるようなものは極力子犬の手が届かないところに移動しておくといった配慮が必要です。

また、この段階では叱ることがあっても子犬の名前を呼んではいけません。

ある程度成長して子犬が自分の名前を理解してしまえば特に問題ありませんが、まだ自分の名前を完全に理解していない段階で名前を呼びながら叱ってしまうと “名前を呼ばれる=叱られている”と勘違いして覚えてしまうことがありますので注意しましょう。

どんなしつけでも繰り返し教え続けることで習慣付いてきますので、焦らずひとつひとつじっくりと取り組んでいくことが大切です。

子犬に何か新しいトレーニングをしている(新しいことを教えている)段階で子犬が既にマスターしているはずのことを忘れていた場合は、子犬の能力をオーバーした“詰め込み教育”をしているというサインです。

そんな時は新しいことを教えるのは一旦中止してひとつ前の段階に戻り、忘れてしまったことをもう一度教え直してあげてください。

以上、【しつけの基礎知識】で解説してきたことを忠実に実践して頂ければ土台作りは完成間近ですが、実はこれと並行してもうひとつ実践すべき秘訣があります。

それはハウスの活用です。

ここで言う『ハウス』とはいわゆるケージやサークルといったペットの寝床となるスペース、すなわち子犬専用のお部屋です。

「ハウスを使うことがしつけの秘訣…?」とお感じになられるかもしれませんが、この“ハウスを活用するか否か”が今後のしつけが上手くいくかどうかを左右する大きなポイントになるのです。

カテゴリ・「ハウスのしつけ」に移ってください。

Vol.1 ハウスのあり方

ペットとして飼育される犬は我々人間のパートナー的な存在となりましたが、本来は土に穴を掘り、巣を造って暮らす(休む)狼を祖先とする穴倉動物です。

そんな犬が人間社会の中(ペットとして)で暮らしていく上でも、当然のことながら巣(=ハウス)が必要となります。

実はそのハウスが子犬のしつけにおいてとても重要な役割を果たすという事実をご存知でしょうか?

人間の感覚だと犬のハウスは『犬を閉じ込めておくオリ』と考えてしまいがちですが、本来穴倉動物である犬にとっては広過ぎない程度のハウスが一番心安らぐ寝床(巣)となるのです。

ハウスを与えられた犬はそのスペースが自分専用のテリトリーであることを徐々に理解していきます。

そして飼い主さんはこれまでの生活を変えることなく、今まで通り過ごしてください。

たったこれだけのことでも犬は人間(飼い主)との立場の違いを自然に理解してくれるのです。

逆にハウスを与えられなかった犬は必然的に飼い主さんと同じ行動範囲で生活することになります。

それが結果的に『自分は人間と対等な地位(もしくは人間よりも上位)にいる』という勘違いを引き起こし易くなってしまうのです。

最初にハウス中心で過ごさせる飼い方と、お部屋の中を自由に放した状態での放し飼いでは明らかに今後のしつけに差が生じてきます。

【しつけの基礎知識】の項目で解説してきたことを忠実に実行し、ハウス中心の飼育を心掛けて頂ければしつけの基礎作りは完了したといっても過言ではありません。

そしてこれらの基礎作りがしっかりと出来てさえいれば、家庭犬レベルのしつけなら飼育初心者さんでも驚くほどカンタンに出来てしまいます。

なぜならそれはあなたの愛犬があなた自身のことを尊敬に値するリーダーであると認識し、そのリーダーからしっかりと守られていることを最高の安堵と感じるからです。(すなわちそれが野生の犬社会におけるボスと群れのメンバーの関係に値するのです)

つまり犬のハウスは犬の習性を上手く活かし、なおかつ犬に負担を与えることなく今後しつけをする上での基礎作りが出来てしまうスーパーアイテムであり、必須アイテムでもあるのです。

最初(子犬を迎えてすぐ)はハウスの中に段ボール箱やペット用ベッド等の寝床とトイレスペースを分けて作ります。

寝床が大き過ぎると子犬は落ち着いて休めませんので、寝床は体を丸めてちょうど収まる程度の大きさが理想的です。

成犬になって『ハウス=自分のテリトリー』ということがしっかり理解出来ていれば、ハウスに自由に出入り出来る状態にしてお部屋の中で放し飼いにしてもいいでしょう。

ハウスの大きさは、最低限の目安として成犬時に身体全体がすっぽり収まって休める程度の大きささえあればじゅうぶんです。

これから子犬を飼育される方も、既に愛犬と暮らしていらっしゃる方も、必ず飼育環境や犬種に見合ったハウスを用意してあげましょう。

Vol.2 ハウスを嫌がる場合

「ウチの子をハウスに入れると嫌がって鳴き叫ぶのですが、どうしたらいいのでしょうか?」といったご質問をよく頂きます。

確かに最初はハウスに入れられたことを嫌がっているように見えるかもしれませんが、これはハウスを嫌がっているのではなく、すぐ近くにいる飼い主さんに対して遊んで欲しいとアピールしているのです。

この時点で「ウチの子はハウスが嫌いなのか…」と人間的な感覚による勘違いをしてすぐにハウスの中で過ごさせること(ケージ飼い)をやめてしまうと一生ハウスで過ごせない子になってしまい、中には犬の習性とは対極の“閉所恐怖症”と化してしまう子もいます。

閉所恐怖症に陥った子に至ってはハウスの中で尋常ではないくらいに暴れ回り、時にはハウスを破壊し得るレベルの暴れ方で思わぬ事故に繋がることもあり得ます。

また、ハウスで過ごせない子は移動の際にキャリーケースに入れるのもひと苦労ですし、ペットホテルで預かってもらえません。

そして最も心配なのは、入院させることになってしまった場合。

入院中は飼い主さんと離れて慣れないケージの中で過ごさなければなりませんので、体調が優れない状況下で、なおかつストレスも余計に感じさせることになってしまうのです。

我が愛犬をそんな状態にしないためにも、たとえ子犬がハウスの中で鳴き叫んでも落ち着くまでしばらくそっとしておきましょう。

通常ですと、ブリーダーさんは子犬が産まれてからお引き渡しするまでの間はケージ飼いをしています。

ケージから出して遊ばせることはあるかもしれませんが、お部屋の中を自由に放した状態で飼っているようなことはまずありませんので、子犬はハウス(ケージ)に対しての違和感は一切持っていません。

『ハウスは子犬を閉じ込める場』というイメージをお持ちの飼い主さんはその考え方を“人間の視点”でななく“犬の視点”に変えて考えてみましょう。

子犬がリラックスできる居心地の良い寝床(=ハウス)を与えることが子犬にとって優しい飼い方なのです。
プロフィール

Author:ニンジー
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