飼い主さん側が手足を噛まれないように気を付けていたとしても、その隙を突いて手足を噛んでくることもあるでしょう。
もし子犬が手足を噛んできた時はその瞬間に子犬がビクッと驚くくらいの大声で「イタイ!」と叫びましょう。
そしてすぐに遊びをやめてハウスに戻します。(ハウスに戻せばもう噛まれることはありません)
ハウスに戻したら5~10分は子犬と目を合わさずに無視し続けましょう。
犬は本来、群れで生活する動物なので、飼い主さん(リーダー)に無視されることを最も苦痛と感じます。
これを繰り返すことによって子犬は「人の手足を噛むと楽しい時間が終わってしまうんだ…」ということを理解し始め、1ヶ月も経てば何らかの効果(違い)が見られるようになるはずです。
「子犬を飼いたいと思っていますが、無駄吠えしない子が希望です。」といったお問い合わせをよく頂きます。
せっかくこれから子犬を迎えるのですから、無駄吠えしない賢いワンちゃんを飼いたいと思うのは当然のことですよね。
ただ、こういった理想をお持ちの方には犬の無駄吠えについて誤解をされている場合が多いようです。
犬が吠えるのは我々人間が言葉を発するのと同様にごく自然な行動で、誰かに何かを伝えようとしている(=意味がある)のです。
飼い主さんにとって都合の悪い時に愛犬が吠えると、それをすべて『無駄吠え』という言葉で片付け、なおかつその原因のすべてが犬側にあると考える風潮があるようですが、それは人間の勝手な言い分です。
では一体どういった吠え方のことを『無駄吠え』と言うのでしょうか?
一般的に『無駄吠え』と呼ばれる行動は大きく分けて2種類挙げられます。
まずひとつは飼い主さんに対して何かを訴えようとするもの。
普通に吠えて飼い主さんに何かを伝えようとするのはごく自然でよくある行動ですが、それがエスカレートして自分のわがままを通すために頻繁に吠えることがあります。
いわゆる"要求吠え"というもので、飼い主さんをリーダーと認めていない子(自分の方が飼い主さんよりも上位と感じている子)に多く見られる行動です。
もうひとつは吠えることによって外敵を威嚇するもの。
犬ですので自分のテリトリー(家の中や敷地内)に外敵(来客者など)が侵入して来れば本能的に吠えますが、リーダーである飼い主さんが自分を守ってくれているということが解ればその吠え方は次第に落ち着いてきます。
しかしながら、飼い主さんがリーダーとして認められていない場合、その犬は群れのリーダーとしての使命感から群れのメンバー(飼い主さん)を守ろうと外敵(来客者など)に吠えて威嚇し続けるのです。
つまり、どちらの場合も本来あるべき主従関係がじゅうぶんに築かれていないことが大きく影響しているのです。
もちろん『よく吠える犬種』や『あまり吠えない犬種』といった犬種としての特性が大きな要素を占めている場合もあるかもしれませんが、無駄吠えの原因は飼い主さん側にもあるということをお忘れにならないでください。
飼い主さんがリーダーシップを発揮し、なおかつ犬を家族の中で最下位に位置させることが無駄吠え防止の基本となりますが、犬(特に雄犬)には自分がリーダーになろうという本能的な意識から支配欲が高まる時期があります。
そういった時期に要求吠えが見られるようになりますが、飼い主さんはそれに応えてはいけません。
飼い主さんが要求吠えに応えてしまうと要求吠えはさらにエスカレートし、これまでの飼い主さんと犬との上下関係にも微妙な変化をもたらすことになりかねません。
本来、群れを成して生活する野生の犬は、群れのメンバーから疎外されることを苦痛に感じます。
われわれ人間と暮らすペットもそれと同じで、家族のみなさんから相手にされないことは非常に大きなダメージとなりますので、明らかに要求吠え(普段の吠え方とは違う)と思われる場合は一喝して、それ以降は相手にせず無視し続けることが一番です。
また、訪問者(来客)に対して酷く吠えた時に飼い主さんが「コラ~!ダメでしょ~!!うるさぁーーーい!!!」などと大きな高い声で過剰に反応してしまう飼い主さんがいらっしゃいますが、これは決して効果的な方法とは言えません。
むしろ逆効果となってしまう場合があります。
このように言い聞かせる(叱る)ことは人間のお子さんでしたら理解できますが、犬(特に子犬)にとっては理解できない場合があります。
この状況下では飼い主さんとしては大きな声で叱っているつもりでしょうが、興奮している犬は自分が吠えて外敵(訪問者)を威嚇していることに対して飼い主さんが同調して一緒に外敵(訪問者)を威嚇してくれていると感じてしまうのです。
こういった時にはまず興奮した犬が身動きを取れないように体を押さえ込んでしまいましょう。
小型犬でしたら犬がフセをした体勢で床に押さえ付けてしまえばOKですが、力が強い中型犬や大型犬でしたら犬が座った体勢で背中側(後ろ側)から覆いかぶされば押さえ込むことができます。
そして片手でマズル(口吻)をふさぎ、低い声で「イケナイ」と言い聞かせましょう。(くれぐれも喉の気道をふさがないように注意しましょう)
これで徐々に落ち着いてきますので、次にハウスに入れて「大丈夫だよ」と声をかけて安心させてあげてください。
飼い主さんがリーダーとして認められていて、なおかつハウスが安心できる場所になっている子はハウスに入るだけでも不安感は軽減し、無駄吠えを大幅に抑えることができるのです。
また、ハウスを毛布などの大きな布で覆って外を見えなくすることでも、不安感を大幅に軽減させることができます。
そして、成犬になって「イケナイ」という言葉の意味をしっかり理解していれば、飼い主さんの一喝で無駄吠えを抑えるようにトレーニングすることも可能です。