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トコトン議論〜日本のエネルギー政策を考える〜

2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発

Space of ishtarist

岡田直樹 プロフィール

この声明が、3号機での異常事態の進行にあわせて発表されました。これが、ドライベントを前提としたものなのか、それともドライベントが不可能であることから、格納容器内での爆発的事象の回避が不可能であると彼らが考えたために発表したものなのか、そこは定かではありません。実際のところ、判断するための材料の一つは、午前4時半から10時までのパラメータの詳細な動きがわかれば、ウェットベントに限界があったのかどうかなど、もう少し具体的な判断材料がはっきりするのですが、この間ちょうど5時間以上も、データが欠落しています。そして、官邸資料には
08:00 3号機に関し、炉内の温度が三百数十度になっており、炉圧が高くなっている
と記述があります。これは、この時点でデータ採取がなされていた証拠であり、そのデータを(未発表の温度データも含めて)未だ東電は発表していないということになります。だとすれば、この午前8時時点でも、隠蔽せざるを得ない異常な事態がすでに発生していた、という推測が可能かもしれません。

そして、午前9:55から11:00にかけて、4回もデータ採取を行っています。そして、この時、原子炉圧力のパラメータが、二つとも、微増源を繰り返しているのが気になります。

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図19 3/20 原子炉圧力の推移詳細



これは想像に過ぎませんが、10-11時の間にドライベントを試みたが、それが失敗に終わったことを示しているのかもしれません。その時点で、格納容器内の爆発的事象は時間の問題となったため、11時30分に官邸が「雨に濡れないように」という主旨の声明を出した、このように考えることもできるのではないでしょうか。

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図20 東電修正後パラメータ抜粋

その後おそらく、15時から圧力容器圧力・格納容器圧力は急降下を始めます。15時で0.155Mpaあった原子炉圧力(A)は、19:40には0.095Mpaに、格納容器圧力は0.189MPaから0.124MPaにまで下降しました。先に述べたように、この時点で格納容器に損傷があったと考えるのが妥当ならば、おそらくは格納容器内で爆発があったのではないかと推測できます。

21時30分からの1000トンの放水は、この圧力低下を受けて行われたものでしょうか?爆発的事象が15時前後であると推定するなら、これは遅すぎる対応である気もします。しかし、19:40分から3回、10分刻みで測定していることを考慮すると、彼らはこのときに初めて、圧力低下が注水の結果ではなく、格納容器・圧力容器の破損が原因であると気づいたのかもしれません。(パラメータの値だけではなく、データ測定の頻度や欠落もまた、重要なメタデータです。)あるいは、発表されていないデータで、20時以降に原子炉圧力計(A)が急激に上昇し、それが放水のきっかけになったという可能性も否定はできません。

いずれにしても、事実として確実に言えることは、21時30分から翌3時58分まで、異例の長時間にわたって1000トン以上の放水が行われたこと、このときすでに格納容器が破損していたこと、そして放水の間、原子炉圧力計(A)が11MPaを超える異常値を示したことです。この放水には、2つの意味があったと考えられます。一つは、格納容器・圧力容器の温度低下・圧力低下を目的としていたということ。もう一つは、放水によって、放射性物質の空気中への飛散をできる限り抑えようとした、という目的です。

21日4:00にデータ採取を行ったところ、原子炉圧力計(A)は、ほぼ正常値である0.202MPaまで下がっています。この間隔の短さからすると、3:58の放水終了後すぐにデータ採取を行ったというよりは、むしろ放水を一時中断してパラメータを測定したところ、ほぼ正常値まで下がっていたため、それをもって放水終了とした、と推測する方が妥当でしょう。すなわち、この時点までに圧力容器が完全に損壊し、圧力容器内の放射性物質放出は止んだ、と東電は判断したのではないかと思われます。

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