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トコトン議論〜日本のエネルギー政策を考える〜

2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発

Space of ishtarist

岡田直樹 プロフィール

その後、21時半から翌21日の3時58分まで、1000トンを超える莫大な量の放水作業を、3号機に向けて行っています。そして、その放水と、原子炉圧力(A)が11.5Mpaを超える異常値が検出された時間は、完全に重なっています。これは、どのように解釈できるでしょうか?もし、この異常値が実際の圧力容器内の圧力を反映していたのだとすれば、これは明らかに異常な事態です。というのは、福島第一原発の圧力容器の設計圧力は8.61MPa(=87.9kg/cm2g)なので、大幅に超過しており、圧力容器がこの時点で大破した可能性は高いと思われます。そして、圧力容器における異常な圧力上昇という事態に対処するために、東電は莫大な放水を行ったということになります

あるいは、原子炉圧力計の異常値は、放水の結果であるという可能性も全否定はできません。すなわち、圧力計になんらかの形で水が当たり、それが異常値を引き起こした可能性です。この仮定のもとでは、この時点ですでに圧力容器が破損していたということになるでしょうし、さらに、破損していなければなぜ東電が莫大な放水を行ったのか、説明が困難となります。しかし、この可能性は論理的には否定できないものの、あまり考えられないことです。というのは、データ採取は放水を一時的に中断したときにしか可能ではないだろうと推測できるからです。

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図18 3号機格納容器圧力(ゲージ圧に変換)(東電修正前データで作成)



ともあれ、放水終了後も圧力は低下し続け、格納容器圧力は21日15時までにほぼ大気圧と一致し、その後6月21日現在まで、ずっと大気圧と平衡を保ちつづけています。このことから、3月20日に格納容器が完全に損壊したと断定できます。

また圧力容器内圧力も、3月21日以降ほぼ平衡を保っております。原子炉圧力計(A)と(B)の値の違いを解釈することは、非専門家である私には困難ですが、その後(A)が安定して下がりつづけて(B)と一致し、現在は-0.1MPa前後で平衡を保っていることから、圧力容器も健全性を保っていないことが見てとれます。

いずれにしても、20日15時から翌日4時までの間に、3号機で相当に異常な事象が発生したことは疑いようがありません。そして、これが、おそらくは福島第一原発最大の事故であり、20日の山形のフォールアウトと、翌21日の関東地方のフォールアウトの汚染源であったことも確実です

ただ、午後20時から翌日の1時25分までのパラメータが、5時間半にわたって完全に欠如していることが問題です。現在わかっている範囲では、午前1時45分から4時までの原子炉圧力(A)の低下が、図12での日立市大沼の午前4時のピークをもたらしたと考えるのは、両者の距離が100km以上離れていることから考えると、非常に困難が伴います。むしろそれは、午前6時過ぎの二つ目のピークと対応していると考えるほうが自然でしょう。ならば、3号機からの主要な放射性物質の放出は、20日午後11時から翌0時半ぐらいまでに発生したと考えなければ、関東地方の放射性プルームの最大のピークと符合しなくなります。ところが、何度も言いますが、ちょうど放水中のためか、その時間帯のデータが欠落しているのです。

このあたり、具体的に何が起きたのか、そして再臨界はあったのか、原子炉の専門家による分析と、(もし存在するならば)東電・政府からのさらなるデータの発表を待ちたいところです。

20-21日にかけての東電・政府の対応



3号機の異常にたいして、東電・政府はどのように対応したのでしょうか。彼らは、こうした異常事態を知らなかったのでしょうか、それとも、異常を知っていたのでしょうか。もし、当時把握していたのなら、事故を知っていて隠蔽していたことになります。

3月20日の格納容器・圧力容器圧力の上昇、そして格納容器CAMSの上昇を受けて、東電・政府がドライベントをする予定であったことは、すでに述べたとおりです。しかし、彼らの発表によれば、圧力が低下したため、ドライベントを行う必要がなくなった、とのことでした。この圧力低下がどの時点のことを意味しているのか、定かではありません。ともあれ、私たちの分析が正しければ、3/19の未明と3/20の午前4時に、二回ベントを行っているはずです。もし、発表内容と整合性を保って理解しようとするならば、これらはドライベントではなく、ウェットベントであり、それゆえ特段の釈明を必要としないと彼らが考えたのではないか、という推測がなりたちえます。

ところで、私たちはこの文脈で、3/20 11:30に発表された首相官邸の声明「東北、関東の方へ――雨が降っても、健康に影響はありません。」を解釈することが可能でしょう。

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この声明を読んで誰もが変だと思うのは、健康には何ら影響がないと言いながら、「雨がやんでから外出」「雨に濡れないようにする」「雨にぬれても心配はないが・・・念のために流水でよく洗う」ことを東北・関東の国民に勧め、そうしなくても「健康に影響」は出ないと言っていることです。表面だけ読めば、言ってることめちゃくちゃですね(笑)。この声明のメタメッセージは、「健康に被害があることは官邸としては立場上言えないけれども、できるだけ雨に当たらないようにしてください」ということのように思われます。
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