はじめに
12日1号機の水素爆発、14日の3号機における水素爆発、15日2号機のサプレッションチェンバー爆発。これら相次ぐ事故によって、福島第一原発から今まで放出されてきた放射性物質の大部分は15日までに放出されてきたものであるかのように東電・政府は発表しています。
ところが、
もっとも重要な放射能汚染は3月21日に起きていることは、あまり一般には知られていません。その汚染源が
3月20日-21日にかけての3号機格納容器内爆発であること、それを
東電・政府は当然知りながら、隠蔽していること―これがほぼ「事実」であると断定できるだけの判断材料がすでに揃いました。
ちなみに、こうした結論の大部分は、実のところ、以前に私が、3/24までに出したものです。それについてはTwitterで当時連続ツイートして、その成果をTogetterにまとめました(
http://togetter.com/li/115299)。ただし、このとき私は、気象に関する知識とデータがなかったため、絶対的な確信を得るまでには至りませんでした。
最近になって、他のブログで、気象方面からのアプローチで、まったく同じ結論を出している人が複数出てきました。また最近になって、東電が修正データを発表したため、再臨界の可能性を含めて再検討できるようになり、また東電による印象操作にかんしてもより詳細に論じることができるようになり、こうして新たにブログに記事をアップする次第です。
以下、論証が極めて長いので、概要として、結論だけ箇条書きで記しておきます。
- 3/21に関東地方を襲ったフォールアウトは、大気圏核実験が全盛期だった過去50年間の同地域の総量に匹敵する莫大なものであった。
- この放射性物質は、よく言われるように、3/15までに福島第一原発から放出された放射性物質が雨によって落ちてきたものでは決してなく、直前に放出されたものである。
- その汚染源は明らかに3号機であり、おそらく福島第一原発最大の事故であった。
- パラメータを分析すると、3号機では、3/20-21に圧力容器設計圧力を大幅に超える圧力が記録され、また格納容器内の爆発的事象によって圧力容器・格納容器とも大破したことが明らかである。
- その事故は再臨界を伴う可能性が否定できない。
- この異常事態を受けて、放射性物質の放出を防ぐために、1000トンを超える放水が行われた。
- 3/21に行われた海水サンプリング調査・土壌採取などは、3号機格納容器内爆発という事態を受けたものである。
- 3/21の3号機原子炉建屋から出た煙は、原子炉が破損した物理的な帰結であるが、東電は当然それを認めることができない。
- 東電・政府はこうした最悪の事態を知りながら隠蔽している。
- 東電は、こうした事態を隠匿するため、データの間引きや悪質な印象操作をいくつも行っている痕跡がある。
3月21日前後、関東地方を襲った放射性物質降下について
現在、様々な農作物や海産物などから放射性物質が検出され、内部被曝が懸念されておりますが、
そのもっとも重要な被害は、主に関東地方に降りそそいだ3月21日の放射性物質降下(以下フォールアウトと呼びます)によってもたらされました。3月15日にも放射性物質が放出されたことはよく知られていますが、それは希ガスが主体であり、農作物や人体への被害は比較的軽微だと考えられるからです。それにたいし、21日のフォールアウトは、ヨウソ・セシウム・ストロンチウムなどが主だったと考えられています。
東大の早野先生(@hayano)のチームが作成したグラフがあります。
図1 全国の放射線量 3月15−5月2日
これを見れば全国、とりわけ関東地方で、まったく同型のグラフの動きが確認できます。15-16日に非常に大きなピークがありますが、それは直後に急降下しています。それに対して、21日にピークがありますが、それは漸近線を描いて下がっていっています。これらピークが福島第一原発由来のものだとすると、両者の違いに関する解釈は、論理的には二つありえます。一つは、21日以降、恒常的に福島第一原発から放射性物質が放出されている可能性です。もう一つは、21日に後者で放射性物質が地表に降下して、それが空間線量に影響を与えている可能性です。もちろん、この二つが複合していることも十分ありえるでしょう。
図2 日本分析センターにおける空間線量率(PDFより)
図3 東京都健康安全研究センターにおける放射線量と降下物