さて。 原子力発電所の常駐検査官について、だいぶ前に「原子力なんでも相談室」に質問していました。 これについて3月末に回答が来ており、後で整理してここに掲載しようと思っていたのですが、とりあえずそのまま掲載しておきます。 ------------------ **** 様 この度は、「原子力なんでも相談室」に御質問を頂きありがとうございました。 頂きました御質問について以下のとおりお答えいたします。 当質問の回答が大変遅れました事を深くお詫び申し上げます。 Q.過去に原子力発電所の工事に携わっていた者です。数年前から左翼系原発反対派 のWEBサイト等を中心に、元原発作業員(故人)が原発の現場について語ったという 文章が出回っておりますが、この文章には事実と明らかに異なる部分が多数見受けら れます。このため、私は個人的な興味からこの文章の「嘘」の検証を行っております。 この度は、この文章の中に私では調べきれない点がありましたので、質問させて頂く こととしました。この同文章の中に、「他の省庁から異動してきた素人の科技庁の専 門検査官(←運転管理専門官の事でしょうか?)が原発の運転許可を出している」と いう文があります。 しかし、私の記憶では、実用原子力発電所の規制は当初から旧通産省の所管であり、 特に運転に関しては、旧科技庁は全く関わっていなかったと思います。また、運転管 理専門官は運転中のプラント監視が業務であり、建設や停止後の運転開始には関与し ていなかったと記憶しております。 この件について、次の通り質問がございます。 1.TMI事故後の運転管理専門官やJCO臨界事故後の保安検査官の配置の際、(農水省等 の)他省庁からの異動は実際にあったのでしょうか? 2.現在、実用原子力発電所の所管は経産省となっていますが、省庁再編前に旧科技庁 がこの実用炉の規制に直接関与した事があったのでしょうか?(設置許可時の同意は 除きます) 3.これまで建設や停止後の運転開始に際して、運転管理専門官が関わる事はあったの でしょうか?(また、どのように関わっていたのでしょうか?) Q1.TMI事故後の運転管理専門官やJCO臨界事故後の保安検査官の配置の際、(農水省 等の)他省庁からの異動は実際にあったのでしょうか? A1. 原子力・安全保安院では、発足(平成13年1月)以降、原子力発電設備、核燃料 施設等の立地地域に原子力保安検査官事務所を置き、原子力保安検査官及び原子力防 災専門官を常駐させ、原子力施設内を巡回し、運転状況の確認を行っています。この 原子力保安検査官及び原子力防災専門官は当省の職員で構成されていますが、原子力 安全行政、治安・防災行政に関連のある省庁(文部科学省、警察庁等)からの職員の 異動や民間等から知見がある人材の中途採用が行われております。当省の職員を含め、 原子力保安検査官、原子力防災専門官としての赴任の前には、専門性を補う研修を行 っています。 Q2.現在、実用原子力発電所の所管は経産省となっていますが、省庁再編前に旧科 技庁がこの実用炉の規制に直接関与した事があったのでしょうか?(設置許可時の同 意は除きます) A2.平成13年1月の省庁再編により経済産業省に原子力安全・保安院が設置されま した。それまで旧科学技術庁が実施していた、所轄については次のとおりです(参考1)。 1)発電用燃料の製造 2)使用済燃料の再処理 3)放射性廃棄物の処分等の核燃料サイクルや発電用研究開発段階炉に関する原子 力安全行政 ご質問の旧科学技術庁が実用原子力発電所の規制に直接関与した事があったかについ てですが、発電用研究開発段階炉については、昭和55年度に旧科学技術庁の管轄で運 転管理専門官を常駐させていました(参考2)が、実用原子力発電所の規制については 旧通商産業省の管轄でした(参考3)。 Q3.これまで建設や停止後の運転開始に際して、運転管理専門官が関わる事はあった のでしょうか?(また、どのように関わっていたのでしょうか?) A3.運転管理専門官制度は、1980年4月に発足しました。これは、1979年3月28日に 発生したアメリカ合衆国でのスリーマイルアイランド原子力発電所事故において、運 転員の誤操作、誤判断に主要原因があったこと、事故の際の迅速かつ適切な通報連絡 を欠いていたことを契機として、原子力発電所の運転管理面での監視監督の一層の強 化の必要性や地方自治体からの強い要請を踏まえ、国として原子力発電所の安全確保 に万全を期す観点から、原子力発電所の運転管理監督を行う運転管理専門官を常駐さ せることとしたものです。 運転管理専門官の業務内容については次のとおりです(参考4)。 1)保安規定の遵守状況の調査 2)原子炉施設の巡視 3)定期自主検査等の立会 4)運転状況の連絡 5)トラブル時の連絡 6)地方自治体への対応 その後、1999年9月30日に起きたJCOウラン加工工場の臨界事故に対する反省から 1999年12月に原子炉等規制法が改正され、全国の原子力施設所在地に原子力保安検査 官事務所を設置し、新たに原子力保安検査官および原子力防災専門官を任命・駐在さ せる事となりました。この制度の発足により、運転管理専門官制度は廃止となりまし た(参考5)。 (参考1)社団法人 火力原子力発電技術協会発行 平成14年度版(平成13年度実績) 原子力施設運転管理日報 p808 XV-2 原子力保安検査官事務所の概要 1.項 原子 力保安検査官事務所について (参考2)原子力安全委員会のホームページ / 原子力安全白書 / 原子力安全年報 (昭和56年度版) / U各論 / 第2部 原子力施設等の安全規制及び安全確保 / 第2章 試験研究用原子炉及び研究開発段階にある原子炉 / 第4節 運転管理 http://www.nsc.go.jp/hakusyo/hakusyo_kensaku_f.htm (参考3)原子力のページ / 原子力知識箱 / 原子力発電と行政、地域社会 / 原子力 行政機構とその役割 / 原子力行政機関(詳しい説明)/ 省庁再編後における原子力行 政の体制 http://www.atom.meti.go.jp/siraberu/genjyo/01/003/index_s.html (参考4)社団法人 火力原子力発電技術協会発行 平成11年度版(平成10年度実績) 原子力施設運転管理日報 p425 IX-2 運転管理専門官制度の概要 (参考5)原子力百科事典「ATOMICA」/ キーワード検索 / 運転管理専門官 http://sta-atm.jst.go.jp:8080/dic_1696_01.html [所管機関・部署]経済産業省 原子力安全・保安院 企画調整課 「原子力なんでも相談室」は平成18年3月31日をもって終了することになりました。 これまで、「原子力なんでも相談室」をご利用いただきまして誠にありがとうございました。 平成18年3月30日 (財)社会経済生産性本部 エネルギー・コミュニケーションセンター (「原子力なんでも相談室」事業担当) ------------------ 結局、「既知の『当たり前の事』を再確認した」事にしかなりませんでした。 一番知りたかった「TMI事故後の運転管理専門官の経歴」については残念ながら回答が得られませんでした。(実際、他の事は検査官対応をやったことがあるので知っていたことばかりで・・・) 「科技庁の役人が原発に関与」は嘘。 「運転管理専門官は運転開始許可」は嘘。 こんなの、職員として常識なのですよね・・・。 |
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原発がどんなものか知ってほしい:奇妙な点
「「原発がどんなものか知ってほしい」の嘘」について 「原発がどんなものか知ってほしい」は、今もっとも話題性のある文章です。 いろいろな意味で..... 内容は、原子力関係者が見れば驚き呆れて怒るような内容のものだと言われています。現在の実情などと全く違いすぎているからです。 しかしこの文章が、非常に大きく広がっており、反原発を支える柱と言えるものになってきています。 「経験に基づいた、一原子力技術者の良心的で生々しい報告」といった風にです。 これにより、「原発は恐ろし... ...続きを見る |
原子力だのゐろゐろ 2006/06/14 20:24 |
「『原発がどんなものか知ってほしい』の嘘」 :原発の常駐検査官は運転許可など出しません。
今になって、こんなに昔の書込みにコメントがつくとは思いませんでした。 ...続きを見る |
「世界は脱原発!」・・・なの? 2008/03/17 01:05 |
内 容 | ニックネーム/日時 |
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「運転管理専門官が運転を許可」 |
専門官対応経験者 2008/03/14 12:17 |
『「原発がどんなものか知ってほしい」の嘘』の嘘 |
2011/03/14 11:46 |
『「原発がどんなものか知ってほしい」の嘘』の嘘、の記事に反論できますか? |
L 2011/03/18 13:48 |
原発擁護者は、特に日本のそれは「日本の原発は絶対安全だ、チェルノもスリーマイルも起こらない」と云ってきた。ずっと国民に嘘をついてきた。この期に及んで今も・・そして貴方も例外ではないようですね |
原発推進者が嘘をつく理由を考える人 2011/06/26 21:46 |
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