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【社説】

震災復興 空洞化から目そらすな

 東日本大震災の復旧が進まない。東京電力福島第一原発の事故収束も見通せない。大勢の人々が職を失った。東北三県はもちろん、オールジャパン体制で新産業を育て、空洞化に立ち向かうときだ。

 仮設住宅の入居率が半分という地域も現れた。宮城など東北三県の失業者は十万人を超えた。避難所を出れば食料支援が打ち切られ、稼ぎがゼロでは入居もかなわない。菅政権は日本の雇用が細っているシグナルの一つと重く受けとめるべきだ。

 日本の自動車の海外生産比率は既に三割を超え、お家芸であるはずのモノづくりは、この十年間で十万もの工場などが海を渡り、三百万人近い雇用機会を失った。

 大震災が全国規模でこれに拍車をかけ、産業・雇用空洞化の懸念は強まる一方にある。自動車、電機制御用などのマイコン生産が世界の約三割を占める半導体大手ルネサスエレクトロニクス(本社・東京)は、日本からの供給網寸断を避けるため米国や台湾メーカーへの生産委託を増やす計画だ。

 五月の貿易統計は部品や電力不足で自動車、半導体輸出が激減、輸入原油値上がりの追い打ちでリーマン・ショック後に次ぐ過去二番目の赤字を記録した。いずれも雇用減を加速させる動きであり、空洞化に弾みがつきかねない。

 二十一世紀に入ってからの日本は対アジア輸出の増加を頼りに雇用を維持してきた。今や国内の需要不足をアジアなどの海外需要で補うことこそが求められている。

 菅政権は復興基本法を自民、公明両党の修正要求を受け入れてようやく成立させた。しかし、決まったのは枠組みだけで、被災地からの要望が強い復興特区創設などの具体策はこれからだ。企画から実施までを一元的に担う復興庁設置も早くて来年とされ、ねじれ国会の下とはいえ遅すぎる。経済政策の停滞は目を覆うばかりだ。

 菅政権は新成長戦略に原発などのインフラ輸出を掲げたが、福島の事故で実現が危うくなった。代わって風力や太陽光発電などの新エネルギー分野が着目され、被災地の福島県も研究・製造拠点、雇用創出の場として、強力に進めるよう期待を寄せている。

 復興特区創設には規制緩和や税制優遇などの特別立法が欠かせない。早急に雇用や投資促進税制などを整え、海外投資も呼び込んで働く場を広げる。

 そのくらいの戦略を手堅く貫けないようでは国民生活の安定という政治の務めは果たせない。

 

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